時速194kmの暴走事故、危険運転致死罪適用なるか?遺族の無念と法廷闘争

大分市で2021年に発生した、時速194kmの暴走による死亡事故。初公判が開かれ、危険運転致死罪の適用をめぐり激しい攻防が繰り広げられています。遺族の悲痛な叫びと、今後の裁判の行方について詳しく見ていきましょう。

遺族の想い:「弟の無念を晴らしたい」

突然の事故で弟の小柳憲さん(当時50歳)を失った姉の長文恵さんは、「弟の無念を少しでも晴らしたい」と語ります。事故から3年9ヶ月が経っても、深い悲しみと喪失感は癒えることはありません。「もっと色んな話をしていればよかった」という後悔の念が、今も胸を締め付けるといいます。

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事故当時、小柳さんは交差点を右折しようとしていました。そこに、当時19歳の男が運転する車が猛スピードで突っ込み、衝突。男の車は法定速度の3倍以上、時速194kmもの速度で走行していたのです。法定速度60kmで走行した場合と194kmで走行した場合を比較すると、その速度差は歴然。194kmで走行した場合、わずか20秒で事故現場に到達してしまうという恐ろしい現実が浮き彫りになりました。

争点:「危険運転致死罪」の適用は?

初公判で最大の争点となったのは、時速194kmという速度が「危険運転致死罪」に該当するかどうかです。被告は起訴内容について「よく分かりません」と述べつつ、小柳さんと遺族に謝罪の言葉を口にしました。

当初、男は過失運転致死罪で起訴されていましたが、約2万8000人もの署名が集まったことなどを受け、検察は再捜査を実施。危険運転致死罪への訴因変更を求めました。過失運転致死罪は注意不足による死亡事故で最長7年の懲役ですが、危険運転致死罪は制御困難な高速度や飲酒運転などによる死亡事故で最長20年の懲役と、より重い罪となっています。

検察側は、「右折車を回避できないほどの常軌を逸したスピードで走行していた。194kmという速度では車体に揺れが生じ、ハンドルやブレーキ操作を誤る恐れが高まる」と主張し、危険運転致死罪の適用を強く求めています。

一方、弁護側は「危険運転致死罪には当たらない」と反論。「被告の車両は意図した通りに車線から逸脱することなく直進できていた」と主張し、争う姿勢を示しました。

過去の判例との比較:速度だけでは判断できない難しさ

危険運転致死罪における「制御困難な高速度」については、具体的な速度は定められていません。道路状況なども考慮されるため、判断は容易ではありません。例えば、三重県津市で発生した乗用車とタクシーの衝突事故では、乗用車は146kmで走行していましたが、事故直前に車線変更できていたことなどから、危険運転とは認められず、過失運転致死傷罪での判決となりました。

遺族の願い:「うっかり過失」では済まされない

長文恵さんは、「194kmという速度での事故が『うっかり過失』なわけがない」と訴えます。判決は今月28日に言い渡される予定です。この裁判の行方は、今後の交通事故における危険運転の判断基準にも大きな影響を与える可能性があります。 小柳さんの無念が晴らされることを願うばかりです。