日本の食卓には欠かせないブリ。近年、天然ブリの漁獲量が減少する一方で、養殖ブリは成長産業として注目を集めています。この記事では、日本の養殖ブリの現状と未来、そして世界に挑む企業の取り組みを詳しく解説します。
海が変われば、ブリも変わる:沖合養殖の革新
日本の養殖漁業は、従来、波の穏やかな湾内で行われてきました。しかし、宮崎県串間市の黒瀬水産は、波の高い沖合に生け簀を設置するという革新的な手法を採用しています。
沖合3.5キロに設置された大型生け簀。5万尾のブリが飼育されている様子
彼らが採用しているのは、海中で生け簀の位置を上下に変えられる浮沈式の生け簀。この技術により、波の高い沖合でも安定した養殖が可能になりました。
沖合養殖のメリット
沖合の速い海流は、湾内と比べて水質が良く、赤潮の発生リスクも低いというメリットがあります。また、常に流れのある環境で育つブリは、身が引き締まり、天然物にも劣らない美味しさを実現しています。
黒瀬水産の米村輝一朗部長。ブリ養殖の可能性を感じ、宮崎県職員から転職
黒瀬水産の米村輝一朗部長は、「沖合養殖は、日本の養殖漁業の未来を切り開く鍵となる」と語ります。
10メートル四方、深さ8メートルの巨大生け簀
黒瀬水産の生け簀は、10メートル四方、深さ8メートルという巨大なサイズ。1基あたり約5000尾のブリが飼育されています。餌やりや清掃の際には、生け簀に取り付けられた浮きに空気を送り込み、海面まで浮上させます。
作業船から浮きに空気が送られ、海中から生け簀が浮上
国内最大規模の養殖場:年間200万尾を出荷
志布志湾の沖合には、大小合わせて270基もの生け簀が設置されており、国内最大規模のブリ養殖場となっています。黒瀬水産は、この養殖場をはじめとする複数の漁場で、年間約200万尾のブリを出荷しています。出荷前のブリは、消波堤の内側にある漁場に移され、天候に左右されることなく、安定した水揚げを実現しています。
日本の養殖ブリの未来
世界的な人口増加に伴い、水産物の需要はますます高まっています。持続可能な漁業として、養殖の重要性は今後さらに増していくでしょう。日本の養殖技術は世界トップレベルであり、黒瀬水産のような革新的な企業の取り組みが、日本の養殖ブリの未来を明るく照らしています。