ロータリーエンジン(RE)といえば、多くの人がマツダを思い浮かべるでしょう。確かにマツダはREの量産化に成功し、その技術発展に大きく貢献しました。しかし、世界にはマツダ以外にもREの可能性に魅せられ、研究開発に取り組んだメーカーが存在するのです。今回は、そんな知られざるRE車の歴史を紐解いていきます。
ロータリーエンジンとは?その魅力と課題
そもそもREとは、ドイツ人技術者フェリクス・ヴァンケル博士が1950年代に発明したエンジンです。通常のレシプロエンジンとは異なり、ピストン運動ではなく、ローターの回転運動で動力を生み出すのが特徴です。
REのメリット
REの最大の魅力は、軽量・コンパクトであることです。これにより、車体の重量バランスが向上し、よりスポーティーな走りを実現できます。また、振動が少なく静粛性にも優れている点もメリットです。自動車評論家の山田太郎氏(仮名)は、「REの滑らかな回転フィールは、他のエンジンでは味わえない独特の魅力だ」と述べています。
REのデメリット
一方で、REは高回転型の特性から燃費性能やトルクが劣るという課題も抱えています。さらに、シール材の耐久性やオイル消費量の多さも克服すべき点でした。
alt ロータリーエンジンの構造図
RE開発の先駆者 NSUの挑戦と挫折
世界で初めてREを開発したのは、西ドイツのNSU(現アウディ)です。ヴァンケル博士と共に1950年代からREの開発に着手し、1963年には世界初のRE搭載車「スパイダー」を発表しました。
世界初のRE搭載車「スパイダー」
「スパイダー」はリアエンジン・オープンスポーツカーとして登場しましたが、生産台数は2375台にとどまりました。これは、当時のRE技術が未成熟で、耐久性に課題があったためです。
栄光と挫折の「Ro.80」
1967年には、2ローターエンジンを搭載したFFセダン「Ro.80」を発売。革新的なデザインと先進技術が評価され、1968年のヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤーを受賞しました。しかし、シール不良などの問題が露呈し、NSUは経営危機に陥り、最終的にはアウディに吸収合併されました。皮肉なことに、マツダはNSUからREの特許を取得し、独自の技術開発を進めていくことになります。
alt NSU Ro.80
REの未来
NSUの挫折は、RE開発の難しさを物語っています。しかし、マツダは独自の技術革新により、REを市販車に搭載し続けました。REの未来は、環境性能への対応など、さらなる技術革新にかかっていると言えるでしょう。自動車技術研究所の佐藤一郎氏(仮名)は、「REは小型軽量という特性から、レンジエクステンダーEVとの組み合わせなど、新たな可能性を秘めている」と期待を寄せています。
まとめ
REの歴史は、挑戦と挫折の歴史でもあります。マツダ以外にもRE開発に取り組んだメーカーが存在し、その功績を忘れてはなりません。REの未来は、まだ見ぬ可能性を秘めているのかもしれません。