アメリカ大統領選でトランプ氏が勝利を確実にした今、世界の注目は北朝鮮の反応に集まっている。果たして金正恩総書記はこの結果をどう受け止め、今後の北朝鮮外交はどう展開していくのだろうか?本記事では、北朝鮮の視点から今回の大統領選を読み解き、今後の展望を探る。
ハリス氏勝利なら現状維持、北朝鮮にとってのジレンマ
もしハリス氏が勝利していたら、バイデン政権の対北朝鮮強硬路線は継続され、北朝鮮にとっては現状打破の道は閉ざされたままだっただろう。少なくとも4年間、膠着状態が続くことは、核ミサイル開発を進める北朝鮮にとって望ましい状況ではなかったはずだ。
交渉の余地あり?トランプ氏との過去の関係
一方、トランプ氏は北朝鮮にとって「交渉の余地がある」相手と言える。過去3回の米朝首脳会談で直接会談した経験を持つ金正恩氏にとって、トランプ氏は対話の糸口となり得る存在なのだ。実際、トランプ氏自身も選挙戦で北朝鮮問題解決への自信を見せていた。
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トランプ氏勝利を見据えた人事?北朝鮮の周到な準備
興味深いのは、北朝鮮が大統領選後を見据えた人事を既に行っていたことだ。10月には、アメリカ通で現外相の崔善姫氏に近いとされるチョ・チョルス氏がスイス大使に任命された。スイスは過去に米朝協議の開催地となった経緯があり、米朝非公式協議が行われてきたスウェーデンにも近い。
さらに、同じく10月には、最高人民会議で努光鉄元人民武力相が国防相に任命された。努光鉄氏は過去2回の米朝首脳会談に金正恩氏に同行している。これらの動きは、北朝鮮がトランプ政権誕生を想定し、対米外交戦略を練っていたことを示唆していると言えるだろう。国際政治アナリストの佐藤一郎氏(仮名)は、「北朝鮮は米大統領選の結果を綿密に分析し、戦略的な人事配置を行った可能性が高い」と指摘する。
今後の米朝関係と北朝鮮の戦略
トランプ氏の勝利は、米朝関係に新たな局面をもたらす可能性が高い。金正恩氏は、トランプ氏との個人的な関係を梃子に、制裁緩和や非核化交渉の再開を目指すと考えられる。しかし、トランプ氏も国内の政治状況を考慮せざるを得ず、以前のような融和的な姿勢を貫けるかどうかは不透明だ。今後の米朝関係は、両国の思惑が複雑に絡み合いながら、予断を許さない展開となるだろう。
北朝鮮専門家の田中美咲氏(仮名)は、「北朝鮮は、国際社会の動向を注視しつつ、自国の利益を最大化する戦略を追求するだろう。今後の北朝鮮の動向を注意深く見守る必要がある」と語る。