アメリカの中央銀行であるFRB(連邦準備制度理事会)は2024年11月7日、2会合連続となる利下げを決定しました。物価上昇(インフレ)の落ち着きが背景にありますが、大統領選で勝利したトランプ前大統領の経済政策がインフレを再燃させる可能性があり、今後のアメリカ経済の先行きに不安要素をもたらしています。
FRB、2会合連続の利下げ決定
FRBのパウエル議長
FRBは7日まで開催されたFOMC(連邦公開市場委員会)で、政策金利を0.25%引き下げ、年4.50~4.75%とすることを決定しました。前回の0.50%から引き下げ幅は半減しています。激しいインフレは大きく低下しつつある一方で、雇用の伸びが鈍化するなど、経済には一部弱さも見え始めています。今回の利下げは、労働市場の下支えを目的としたものです。
パウエルFRB議長は記者会見で、「勝利宣言をしているわけではない」と前置きしつつ、「今後数年間でインフレ率が目標の2%程度に落ち着くという見通しには一貫性がある」と自信を示しました。
トランプ氏の経済政策がインフレ再燃の懸念材料に
パウエル議長の言葉からは、苦心してインフレを抑え込んできた自負がうかがえます。しかし、その努力を無にする可能性のある動きがあります。それは、来年1月のトランプ氏の再登板です。
パウエル議長は記者会見で、「短期的には、選挙が我々の政策決定に影響を及ぼすことはない」と明言し、トランプ新政権の金融政策への影響を否定しました。しかし、トランプ氏は選挙戦で、全輸入品に10~20%、中国製品には60%の高関税を課すと公約しています。輸入業者はこの追加関税分を価格に転嫁するとみられ、多くの経済学者はインフレ再燃の可能性を警告しています。
さらに、トランプ氏は来年末に期限が切れる個人所得減税の恒久化や、移民対策の強化も打ち出しています。これらの政策も、様々な経路を通じてインフレを再燃させる可能性があります。
金融専門家の山田一郎氏(仮名)は、「トランプ氏の保護主義的な貿易政策は、輸入物価の上昇を通じてインフレ圧力を高める可能性がある。FRBは難しい舵取りを迫られるだろう」と指摘しています。
FRBの金融政策の行方
トランプ氏の政策は財政悪化にもつながる可能性があり、アメリカの長期的金利は高止まりする可能性があります。一部の証券会社は、来年半ばまでにFRBは利下げを休止せざるを得なくなると予想しています。
パウエル議長は会見で、政権や議会が決めた政策が時間の経過とともにFRBの政策に影響を与えるという原則に言及しました。「政策変更のタイミングや内容がどうなるかは分からない」としながらも、トランプ氏の政策から無縁ではいられないことを示唆しました。
パウエルFRB議長の記者会見
FRBの利下げ決定は、一時的に市場に安心感をもたらすかもしれませんが、トランプ氏の経済政策によるインフレ再燃の可能性は、アメリカ経済の先行きに大きな不確実性をもたらしています。今後のFRBの金融政策の行方に注目が集まります。