国民民主党が提唱する年収103万円の壁の撤廃が、2025年度税制改正の議論の中心に躍り出ています。この非課税枠の引き上げは、多くの主婦層やパートタイム労働者にとって待望の政策であり、家計への影響は大きなものとなるでしょう。しかし、その実現可能性については、財源確保という大きな課題が立ちはだかっています。
巨額の税収減と財源確保のジレンマ
政府内では、この壁の撤廃によって7兆~8兆円もの税収減が見込まれるとの試算が発表されています。この巨額の財源をどのように確保するかが、政策実現の鍵となります。国民民主党の玉木雄一郎代表は、過去の予算の使い残しや税収の上振れ分を財源とする考えを示しています。2023年度には、新型コロナウイルス対策や物価高対策として計上された予備費に多額の使い残しがあったことが指摘されています。また、特別会計にも剰余金が存在することが明らかになっています。これらの「埋蔵金」を活用することで、税収減を補填できる可能性があるというわけです。
予算の使い残し
過去の予備費と特別会計の剰余金:本当に「埋蔵金」となるか?
玉木代表の主張は、一見すると理にかなっているように見えます。しかし、予備費の使い残しは、あくまでも緊急時の支出に備えて計上されたものであり、安易に他の用途に流用することは適切ではありません。また、特別会計の剰余金も、それぞれの会計の目的のために積み立てられたものであり、不用意に手を付けることは将来の財政運営に悪影響を及ぼす可能性があります。例えば、年金特別会計の剰余金は、将来の年金給付に備えて積み立てられたものであり、これを他の用途に流用することは、年金制度の持続可能性を脅かすことになりかねません。
専門家の意見:財政健全化とのバランスが重要
財政政策に詳しい専門家、山田一郎氏(仮名)は、「予備費や特別会計の剰余金は、いわば国の貯金のようなものです。これらを安易に使い果たすのではなく、将来の財政健全化にも配慮しながら、慎重に活用していく必要があります」と指摘しています。 年収103万円の壁撤廃は、確かに多くの国民にとってメリットのある政策ですが、その実現には慎重な財源検討が不可欠です。
国民生活への影響と今後の展望
年収103万円の壁撤廃は、家計の収入増加につながるだけでなく、女性の社会進出を促進する効果も期待されています。現在、多くの女性が配偶者の扶養の範囲内で働くことを余儀なくされており、能力を発揮しきれていないケースも少なくありません。この壁が撤廃されれば、より多くの女性が活躍の場を広げ、経済活性化にも貢献することが期待されます。今後の議論では、税収減への対策だけでなく、政策のメリットについても十分に検討されることが重要です。国民民主党の提案が実現するかどうか、今後の動向に注目が集まります。