刑務所内での受刑者への処遇改善として、2023年2月から全国の刑務所・拘置所で受刑者を「さん」付けで呼ぶ取り組みが始まりました。この変化は、2022年に名古屋刑務所で発覚した刑務官による受刑者への暴行・暴言事件をきっかけに、受刑者の人権意識向上を目指した改革の一環です。果たして、この「さん付け」化は塀の中の現実をどのように変えたのでしょうか？本記事では、元受刑者や元刑務官への取材を通して、その実態に迫ります。
刑務所と牢屋：歴史的背景から紐解く
現代の刑務所と江戸時代の牢屋。その違いをご存知でしょうか？日本では、かつて自力救済が認められており、罪人は私的制裁の対象とされていました。牢屋は、主に判決前の容疑者の逃亡を防ぐための施設としての役割を担っていました。拷問による取り調べや、火あぶり、獄門といった即時執行される死刑が一般的だった時代、長期勾留や多数の囚人を収容する必要性は低かったのです。
江戸時代の牢獄をイメージしたイラスト
名古屋刑務所：暴力と改革の舞台
名古屋刑務所では、過去に受刑者への深刻な暴行事件が発生しています。2001年と2002年には、消防用ホースを使った放水や革手錠付きベルトによる締め付けで受刑者が死傷する事件が起き、大きな波紋を呼びました。そして2022年、再び暴行・暴言事件が発覚。これらの事件を背景に、第三者委員会が設置され、人権意識の希薄さが指摘されました。
さん付けの効果：元受刑者と元刑務官の声
「さん付け」導入後、刑務所内は本当に変わったのでしょうか？今回、私たちは様々な経験を持つ元受刑者３名と元刑務官１名にインタビューを行いました。彼らの証言から、「さん付け」化がもたらした変化、そして未だ残る課題を探ります。
長期服役経験者の視点
16年間服役したAさん、14年間服役したBさん、そして前科11犯のCさん。それぞれの視点から、刑務所内の雰囲気の変化、刑務官との関係性、そして受刑者自身の意識の変化について語ってもらいました。 刑務所という閉鎖的な環境で、”さん”付けという一見小さな変化が、どのような影響を与えているのか、彼らの言葉に耳を傾けてみましょう。
元刑務官の証言
長年刑務官として勤務した経験を持つD氏。彼は、受刑者への「さん付け」導入についてどのように考えているのでしょうか？刑務官側の視点から見た変化、そして今後の課題について、貴重な証言を得ることができました。 受刑者と刑務官、それぞれの立場からの声を聞くことで、より多角的に「さん付け」化の実態を理解することができます。
更生への道：更なる改革への期待
「さん付け」化は、刑務所改革の第一歩と言えるでしょう。受刑者の人権を尊重し、更生を支援する上で、コミュニケーションの改善は重要な要素です。しかし、真の改革には、施設の環境改善、教育プログラムの充実、そして社会復帰支援の強化など、多岐にわたる取り組みが必要です。
今後、刑務所が社会復帰を促進する場となるために、どのような改革が必要なのか、議論を深めていく必要があるでしょう。 専門家の意見も参考にしながら、より良い未来を目指した取り組みが期待されます。
