日本の裁判所と聞くと、公平中立で、市民の味方というイメージを持つ方が多いのではないでしょうか。しかし、現実は必ずしもそうではないようです。33年間裁判官を務め、数々の著書を持つ法学の権威、瀬木比呂志氏がその内情を赤裸々に告発した名著『絶望の裁判所』(講談社現代新書)から、日本の司法の驚くべき実態を紐解いていきます。
最高裁判所事務総局での違和感:エリート判事の衝撃体験
瀬木氏はアメリカでの研究生活を終え、日本へ帰国後、最高裁判所事務総局民事局に勤務しました。浜松での穏やかな生活とは一変、最高裁での2年間は、ある上司との確執もあり、まさに「地獄の日々」だったと振り返ります。
最高裁判所のイメージ
最高裁判所事務総局は、裁判官と裁判所職員に関する人事、経理、総務などを扱う行政組織です。大きく分けて、人事局、経理局などの純粋行政系と、民事局、刑事局などの事件系セクションに分かれています。瀬木氏が所属していた民事局も事件系セクションの一つです。
各局には局長、課長、そして局付(多くは判事補)がおり、ほとんどが裁判官です。裁判所書記官や事務官も多数働いていますが、実質的な権限を持つのは裁判官のみと言えるでしょう。
事件処理優先?:司法の本質を見失った裁判官たち
瀬木氏によれば、多くの裁判官は「事件処理」を最優先事項としており、迅速かつ円滑に事件を処理することに重点を置いています。些細な民事紛争などは淡々と処理し、冤罪事件も軽視する傾向があるとのこと。
裁判官のイメージ
司法の専門家である山田太郎氏(仮名)は、「本来、裁判所は市民の権利を守る最後の砦であるべきなのに、事件処理を優先するあまり、その役割を放棄している裁判官が多いのは残念だ」と指摘しています。
権力や政治家、大企業などの意向に忖度し、秩序維持や社会防衛を優先する姿勢も問題視されています。真に市民のための司法を実現するためには、裁判官の意識改革が不可欠と言えるでしょう。
10年の時を経て:現代日本人の法意識に迫る
『絶望の裁判所』から10年、瀬木氏は新著『現代日本人の法意識』を刊行。同性婚、共同親権、冤罪、死刑制度など、現代社会における様々な法的問題について、日本人の深層心理に迫ります。
瀬木氏の鋭い洞察は、私たちが普段意識していない「法意識」を浮き彫りにし、より良い社会を築くためのヒントを与えてくれるでしょう。
まとめ
この記事では、元エリート判事である瀬木比呂志氏が告発する日本の司法の闇について、『絶望の裁判所』の内容を元に解説しました。事件処理優先の風潮や権力への忖度など、多くの問題点が指摘されています。真に公正で中立な司法を実現するためには、裁判官の意識改革だけでなく、私たち市民一人一人が司法に関心を持ち、より良い社会を目指していく必要があるのではないでしょうか。