韓国経済の屋台骨を支える40~50代の中高年層に、厳しい現実が突きつけられています。希望退職、事実上の解雇勧告…「新45歳定年」という言葉がささやかれるほど、雇用不安が広がっています。本記事では、大企業から中小企業まで、韓国の深刻な雇用情勢について詳しく解説します。
大企業から中小企業へ広がる希望退職の波
かつては大企業を中心に囁かれていた希望退職の嵐が、今や中小企業にも容赦なく吹き荒れています。20人規模の中小企業で役員を務めるソンさん(46歳)は、社長から事実上の退職勧告を受けました。「仕事を減らすからパートタイムで働いてほしい」という言葉を覆い隠すように、ソンさんの希望も名誉も踏みにじられたのです。大企業であれば訴訟も視野に入るものの、中小企業では泣き寝入りするしかないのが現状です。転職活動に有利な経歴を積むため、ソンさんは今は耐えるしかないと語っています。
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統計データが示す40~50代の厳しい雇用状況
韓国統計庁のデータ分析によると、2024年6月末時点で、過去1年以内に退職した40~50代の失業者のうち、非自発的失業者の割合は50.8%に達しました。2014年の42.3%から10年間で8.5ポイントも増加しています。全年齢層の非自発的失業率44.4%と比較しても、6.4ポイント高い数値です。非自発的失業とは、会社の倒産やリストラ、希望退職、契約満了など、本人の意思とは関係なく職を失ったケースを指します。つまり、40~50代の失業者の半数以上が、望まない形で職を失っているという厳しい現実が浮き彫りになっています。
希望退職という名のリストラ:増加の一途を辿る非自発的失業
40~50代の非自発的失業の中でも、希望退職・早期退職・整理解雇といった、いわゆる「勧告辞職」の割合は、10年間で12.3%から18.8%へと6.5ポイントも増加しました。全年齢層の増加幅(4.1ポイント)を大きく上回る深刻な状況です。
韓国の有名企業人事コンサルタント、パク・チョルミン氏の見解では、「企業は人件費削減を最優先課題として捉えており、経験豊富な40~50代は格好のターゲットになっている」と指摘しています。
大企業の希望退職ラッシュ:その裏にある現実
KT、ポスコ、イーマート、SKオン、LGハロービジョン、ロッテホームショッピングなど、韓国を代表する大企業で相次いで希望退職が実施されています。都市銀行では、40~50代の希望退職募集がもはや恒例行事と化しています。サムスン電子でさえ、海外子会社を中心に最大30%の人員削減を進めているという報道もあります。
大企業の場合、退職者に対して再就職支援プログラムや慰労金が用意されるケースが多いですが、中小企業ではそうした配慮は期待できません。中小企業に勤務していたキムさん(53歳)は、会社の業績悪化を理由に突然の退職勧告を受けました。大企業に比べて人事制度や労働組合の力が弱い中小企業では、簡単に解雇されるリスクが高いことを痛感したと語っています。
新45歳定年:低成長時代における雇用不安
元サムスン電子人事チーム長で、人事革新処長を務めたイ・グンミョン氏は、現在の状況を「新45歳定年」と表現しています。1997年の通貨危機で社会問題となった「45歳定年」と同様に、低成長時代において40~50代が雇用不安にさらされているというのです。
希望退職という名のリストラ、そして広がる雇用不安。韓国の40~50代は、厳しい現実に立ち向かわなければなりません。この「新45歳定年」という新たな社会問題に、韓国政府はどのような対策を講じるのでしょうか。今後の動向に注目が集まっています。