日産、業績低迷の真相:ゴーン氏の負の遺産と未来への展望

日産自動車の2024年9月期中間決算は、営業利益が前年同期比90.2%減の329億円、純利益は同93.5%減の192億円と、非常に厳しい結果となりました。一時的な要因ではなく、構造的な競争力低下が原因とみられ、大規模リストラも発表されています。9000人の人員削減、グローバル生産能力の20%削減など、日産は大きな転換期を迎えています。 この記事では、日産の業績低迷の背景にある「ゴーン氏の負の遺産」を詳しく解説し、今後の展望について考えていきます。

ゴーン氏の功績と影:栄光から衰退へ

1999年に日産のCEOに就任したカルロス・ゴーン氏は、大胆なコストカットで経営危機を脱却させ、V字回復を成し遂げた立役者として知られています。しかし、2005年にルノーの会長を兼務するようになって以降、日産の経営戦略に変化が生じ始めました。

altalt日産自動車のロゴ。千葉市幕張メッセで開催されたカスタムカーイベント「東京オートサロン」にて。過去の栄光を取り戻せるのか、注目が集まる。

ゴーン氏の功績は否定できませんが、その後の経営判断には疑問符がつきます。長年日産の決算説明会に参加してきた経済アナリストの山田一郎氏(仮名)は、「ゴーン氏はルノーとフランス政府の意向を優先するようになり、日産の長期的な成長戦略がおろそかになった」と指摘しています。

ゴーン氏が遺した3つの負の遺産:日産低迷の根本原因

ゴーン氏の経営判断が日産にどのような影響を与えたのでしょうか。具体的に3つの「負の遺産」を解説します。

1. 欧州重視戦略の失敗:市場変化への対応遅れ

かつて日本車は、日本・米国・欧州市場を重視していました。しかし、近年は成長性の低い欧州市場を縮小し、日本・米国・アジア(特に中国)に注力するのが主流となっています。ホンダも英国工場を閉鎖し、欧州生産から撤退しています。

altaltカルロス・ゴーン氏の記者会見の様子。その経営手腕は、現在も様々な議論を呼んでいる。

しかし、ルノーの影響下にあった日産は欧州事業を縮小できず、2024年9月期中間決算でも欧州事業は232億円の営業赤字を計上し、業績の足を引っ張っています。これは、ゴーン氏の欧州重視戦略の失敗と言えるでしょう。

2. HEV・PHEVへの対応遅れ:電動化戦略の誤算

ハイブリッド車(HEV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)の開発競争においても、日産は後れを取っています。世界の自動車市場は電動化へと急速にシフトしており、HEV・PHEVのラインアップ拡充は必須となっています。

自動車ジャーナリストの佐藤健二氏(仮名)は、「日産は電気自動車(EV)に注力する一方で、HEV・PHEVへの投資が不足していた。これは、市場トレンドを読み誤った結果と言えるだろう」と述べています。

3. 販売重視によるブランド毀損:過剰な販売奨励金

ゴーン氏は販売台数を重視し、過剰な販売奨励金をつぎ込みました。これは短期的な販売台数増加には貢献したものの、ブランドイメージの低下を招き、長期的にはマイナスの影響を与えました。

ブランド戦略コンサルタントの田中美咲氏(仮名)は、「過剰な値引きはブランド価値を毀損する。日産は販売台数だけでなく、ブランドイメージ向上にも力を入れるべきだった」と指摘しています。

日産の未来:再生への道筋

日産は、ゴーン氏の負の遺産を克服し、再生への道を歩むことができるのでしょうか。大規模リストラは痛みを伴うものの、経営の効率化と競争力強化には不可欠です。

次世代自動車や自動運転技術の開発競争が激化する中、日産は明確なビジョンと戦略を打ち出し、持続的な成長を実現していく必要があります。今後の日産の動向に注目が集まります。