北朝鮮で「貨幣交換」(新ウォンへの切り替え)が実施されるという噂が広がり、市場に大きな混乱が生じている。物価高騰、買い占め、外貨への両替など、不安な状況が続いている。本記事では、この貨幣交換騒動の真相に迫り、北朝鮮経済の現状を探る。
貨幣交換の噂と市場の反応
10月末頃から北朝鮮国内で貨幣交換の噂が急速に広まり始めた。咸鏡北道と両江道の取材協力者からの情報によると、新興富裕層や幹部らが家電製品、家具、食料品などの買い占めに走り、外貨購入も増加しているという。銀行では破損紙幣の交換を停止し、新紙幣・硬貨が発行されるという未確認情報も流れている。当局はデマだと否定しているものの、住民の不安は払拭されていない。
恵山市で商行為をする人々
この噂の発端は、金主と呼ばれる新興富裕層や幹部による買い占め行動にあったようだ。彼らが密かに物資を買いだめ、外貨を購入しているのを住民が察知し、貨幣交換の憶測が広まったとされている。当局は買い占めや個人間の売買を取り締まり、没収すると警告しているが、効果は薄いようだ。
北朝鮮式キャッシュレス化との関連性
今回の貨幣交換騒動は、北朝鮮が進める「現金カード」の普及とも関連している。2023年末頃から国営企業や公務員の給与を現金カードへの入金に切り替える動きが始まり、現在では農村部を除く多くの職場で導入されている。このカードは国営商店などで利用でき、個人で現金をチャージすることも可能だ。
中国元札を持つ女性
貨幣交換が行われた場合でも、カード内の残高は新ウォンに交換可能という噂が広まっており、金主や幹部らは現金をカードにチャージしているという。買い占めや外貨購入も、貨幣交換の情報を得た彼らが資産を守るため、あるいは儲けの機会と捉えて行動している可能性がある。北朝鮮経済専門家のキム・ヨンチョル氏(仮名)は、「現金カードへの移行と貨幣交換の噂が重なり、市場の不安定さを増幅させている」と指摘する。
経済不安の根深さと今後の展望
北朝鮮地図
今回の騒動は、北朝鮮経済の不安定さを浮き彫りにしている。国際社会の制裁や自然災害の影響に加え、経済政策の不透明さが市場の混乱を招いている。貨幣交換の真偽は不明だが、今後の経済動向に注視する必要がある。市場の安定化に向け、政府の明確な情報公開と適切な経済対策が求められるだろう。