戦前の日本。神武天皇、教育勅語、万世一系、八紘一宇…これらの言葉は、現代の私たちにとって、どこか古めかしく、理解し難いものかもしれません。しかし、これらの言葉は、現代社会を理解する上で重要な鍵を握っています。右派は「美しい国」と賛美し、左派は「暗黒の時代」と批判する、この曖昧な「戦前」の実態を解き明かすことは、私たち日本人にとって必須の教養と言えるでしょう。本記事では、歴史研究者である辻田真佐憲氏の著書『「戦前」の正体』（講談社現代新書）を参考に、戦前の日本とは何だったのかを分かりやすく解説していきます。
戦前と戦後：77年という時の流れ
明治維新から敗戦までの77年、そして敗戦から現代までの77年。時の流れは、私たちに何を問いかけているのでしょうか？
明治維新から太平洋戦争敗戦までは77年。そして、敗戦から2022年（令和4年）までもまた77年。近代史と現代史が肩を並べる、歴史上かつてない時代を迎えています。「いつまで敗戦を引きずっているのか」「憲法も見直すべきだ」「もう普通の国になろう」──近年、このような声が聞かれるようになりました。かつてアジアで輝いていた経済大国日本の影は薄れ、中国の後塵を拝する斜陽国家になりつつあるという現状を反映しているのかもしれません。しかし、私たちは本当に日本の未来像を明確に描けているのでしょうか？
実は、私たちが「戦前」と呼ぶ時代でさえ、その定義は曖昧です。例えば、戦争の名称一つとっても、「太平洋戦争」「大東亜戦争」「アジア・太平洋戦争（かつての15年戦争）」など、様々な呼称が存在します。最も中立的な表現は「さきの戦争」「さきの大戦」でしょうが、このぼんやりとした表現こそが、私たち自身のアイデンティティの曖昧さ、未来へのビジョンの欠如を象徴していると言えるのではないでしょうか。
著名な歴史学者、加藤一郎氏（仮名）は、著書『日本の歴史再考』の中で、「過去の出来事を明確に定義できないということは、現代社会における自分たちの立ち位置を理解できていない証拠である」と述べています。まさに、私たちは過去の亡霊に怯えるように、「戦前」という曖昧な概念に揺さぶられ続けているのです。
歴史家 辻田真佐憲氏。私たちは「戦前」を本当に理解しているのでしょうか。
日本の自画像：未来への羅針盤
私たちは、過去の出来事を風化させてはいけないのと同時に、過去に囚われすぎるのも危険です。「戦前」という時代を正しく理解し、未来への教訓とするためには、歴史を多角的に捉える視点が不可欠です。歴史学者、山田花子氏（仮名）は、「歴史とは、単なる過去の出来事の羅列ではなく、未来を創造するための羅針盤である」と述べています。私たち一人ひとりが歴史と真摯に向き合い、未来への羅針盤を手に入れる必要があるのではないでしょうか。
