韓国の夕食事情:激務からワークライフバランスへ、食文化はどう変わった?

韓国の夕食風景は、ここ数年で劇的な変化を遂げています。かつては深夜までの残業や会食が当たり前でしたが、今ではワークライフバランスを重視する動きが広がり、夕食のスタイルも大きく様変わりしています。この記事では、韓国の夕食事情の変遷と、その背景にある社会の変化について探ります。

昔の韓国の夕食:深夜残業と会食文化

1990年代、韓国では長時間労働が常態化し、夕食は職場での会食や深夜残業後の遅い時間に取ることが一般的でした。筆者も大学時代の同期と会うと、誰もが夕食会と夜勤の辛さを語り合ったものです。毎日のように会食があり、その後も職場に戻る日々。飲食店も会社員の生活リズムに合わせて深夜まで営業していました。二日酔い対策ドリンクのCMが盛んに流れるほど、夜遅くまでお酒を飲む文化が根付いていたのです。

韓国の昔の夕食風景韓国の昔の夕食風景

時代の変化:ワークライフバランスの浸透

しかし、近年ではワークライフバランスの重要性が高まり、韓国の労働時間も短縮傾向にあります。カード会社の調査によると、会社員の退勤時間は5年前と比べて平均19分も早まりました。午後6~7時台の退勤が依然として最も多いものの、7時以降の退勤は減少し、午後5~6時の退勤が大幅に増加しています。

退勤後の過ごし方も変化しています。飲食店や居酒屋に行く代わりに、ジムに通う人が増えているのです。これは韓国の夕食文化が先進国型へと変化していることを示唆しています。

飲食店の苦境と新しい夕食の形

ソウル市光化門で飲食店を営んでいた知人は、最近店を閉めました。2次会向けの居酒屋でしたが、1次会で解散して帰宅する人が増え、経営が難しくなったといいます。夜9時以降は「赤字タイム」と呼ばれるほど、客足が遠のいてしまうのです。

かつては深夜までお酒を飲み、歌を歌ってから帰る光景が当たり前でしたが、今では夜8時にはラストオーダー、夜9時にはほとんどのレストランが閑散としています。人件費や材料費の高騰、コロナ禍で定着した会食自制の雰囲気、共稼ぎ世帯の増加など、様々な要因が韓国の夕食文化に変化をもたらしているのです。

今後の課題:生産性向上と新しい産業構造

韓国の労働時間はOECD加盟国の中でも減少傾向にありますが、一方で中国など新興国では長時間労働が依然として続いています。韓国は労働時間を短縮しつつ、より高い付加価値を生み出す産業構造へと転換していく必要があります。

韓国の食文化の未来

韓国の夕食事情の変化は、社会全体の変化を反映しています。ワークライフバランスの重視、健康志向の高まり、そして新しいライフスタイルの模索。これらの変化は、韓国の食文化の未来をどのように形作っていくのでしょうか。今後の動向に注目が集まります。