世界が気候変動対策に奔走する中、COP29(国連気候変動枠組み条約第29回締約国会議)の会場であるアゼルバイジャンの首都バクーには、不安の空気が漂っています。その原因は、来年1月に就任するトランプ次期大統領の存在です。トランプ氏は過去にパリ協定からの離脱を表明しており、再選によってその懸念が現実味を帯びてきました。地球温暖化対策の国際協調に、再び暗雲が立ち込めています。
パリ協定離脱の可能性と国際社会の反応
バイデン政権で気候変動問題を担当するジョン・ポデスタ大統領上級顧問は、トランプ氏の再選を受け、パリ協定離脱の可能性に強い懸念を示しました。ニューヨーク・タイムズ紙の報道によれば、トランプ氏の政権移行チームは既にエネルギーと気候問題に関する大統領令の準備を進めており、パリ協定からの再離脱も視野に入れているとみられます。 就任後すぐに脱退を通告すれば、2026年1月20日には脱退が確定し、米国はパリ協定の締約国会議への参加資格を失うことになります。
altバクーで開催されたCOP29での国連グテーレス事務総長とアゼルバイジャンのアリエフ大統領の記念撮影の様子。
米国がパリ協定から離脱すれば、日本や欧州各国は中国や新興国との気候変動対策の交渉において、米国という重要なパートナーを失うことになります。米エネルギー省のジェニファー・グランホルム長官は、再生可能エネルギーへの移行は不可逆的な流れであると強調しましたが、気候変動の影響を最も深刻に受ける島嶼国などは、米国の離脱に強い危機感を募らせています。
島嶼国からの訴えとCOP29への影響
カリブ海の島国アンティグア・バーブーダのガストン・ブラウン首相は、米国は歴史的に大量の温室効果ガスを排出してきた責任があり、気候変動対策において指導力を発揮する義務があると訴えました。今回のCOP29では、先進国から途上国への資金援助の増額が主要議題の一つとなっていますが、米国の離脱は議論の進展を困難にするとの見方が強まっています。
日本の環境省幹部も、米国の不在は交渉の大きな障害になるとの見解を示しています。気候変動問題の専門家である山田一郎氏(仮名)は、「米国の離脱は、地球規模の気候変動対策への取り組みに深刻な悪影響を与えるだろう」と警鐘を鳴らしています。
altトランプ次期大統領の気候変動に関する発言がCOP29に暗い影を落としている。
アルゼンチンの動向と今後の展望
米国の動向に追随する国も現れ始めています。CNNの報道によると、南米アルゼンチンのCOP代表団は、本国政府から交渉離脱の指示を受けたとのことです。トランプ氏と親交のあるハビエル・ミレイ大統領は、過去に気候変動を「社会主義者の嘘」と発言し、物議を醸していました。ワシントン・ポスト紙は、ミレイ氏がパリ協定からの離脱を検討していると報じています。
トランプ氏の再選は、国際的な気候変動対策の協調体制に大きな影を落としました。今後のCOP29の行方、そして地球の未来は、各国の指導者の決断にかかっています。