軽井沢のツキノワグマ保護管理:人とクマの共存を目指す取り組み

軽井沢といえば、避暑地として有名ですが、実は人とツキノワグマが共存する、ユニークな地域でもあります。今回は、軽井沢で14年間もの間、人身被害ゼロを達成しているクマ保護管理の現場に密着取材しました。

ドラム缶わなの中で出会った野生のツキノワグマ

取材班は、10月20日、実際に野生のツキノワグマを目撃する貴重な機会を得ました。ドラム缶型のわなの中から聞こえる「ガサガサ」「ゴンゴン」という音、そして時折響く爪でひっかく「ガリガリ」という音は、野生の息吹を感じさせる、緊張感あふれる体験でした。

ドラム缶わなの中のツキノワグマドラム缶わなの中のツキノワグマ

緊迫の麻酔処置と個体識別

このクマは、シカやイノシシ用のわなに誤って捕獲された個体でした。このような場合、麻酔銃でクマを眠らせ、個体識別を行った後、山へ帰します。今回は、個体識別の前に一時的にドラム缶わなに移すという珍しいケースでした。

麻酔銃の扱いは、クマの体格や季節によって投薬量や針の大きさを調整する必要があるため、高度な技術が求められます。熟練の担当者たちは、わずか数秒でクマの左腰付近に麻酔を命中させました。

麻酔銃で眠らされたツキノワグマ麻酔銃で眠らされたツキノワグマ

麻酔が効いたクマは、シートの上に移動され、体長や体重などの計測、体毛や歯の採取、発信器の装着など、様々な個体識別作業が行われました。これらの作業は、クマへの負担を最小限にするため、1時間以内に完了させる必要があります。

経験と知識が支える迅速かつ正確な作業

NPO法人ピッキオの田中純平さんと大嶋元さんは、長年の経験に基づき、迅速かつ正確に作業を進めていました。例えば、クマの脈拍を探す際、経験の浅い研修生に的確なアドバイスを送る場面も見られました。

野生動物保護管理の第一人者である山田博士(仮名)は、「クマの保護管理は、科学的な知識と現場での経験の両方が不可欠です。ピッキオのような専門家集団の活躍が、人とクマの共存に大きく貢献しています」と述べています。

人とクマの共存を目指して

ピッキオは、2000年から軽井沢町からの委託を受け、クマの保護管理事業に取り組んできました。彼らの地道な努力により、軽井沢町では長年にわたり人身被害ゼロを維持しています。今回の取材を通して、人とクマが共存できる社会の実現に向けた、彼らの献身的な活動の一端を垣間見ることができました。

軽井沢のクマ保護管理の取り組みは、他の地域にとっても貴重なモデルケースとなるでしょう。人と自然が調和する未来を目指し、更なる研究と活動の発展が期待されます。