ショルツ首相のウクライナ支援に対する姿勢が、国内外から批判を浴び、難しい立場に立たされています。プーチン大統領との電話会談は欧州諸国の反発を買い、長射程ミサイル「タウルス」の供与を巡っても国内で議論が紛糾しています。果たしてショルツ首相の真意はどこにあるのでしょうか?この記事では、ショルツ首相を取り巻く複雑な状況を詳しく解説します。
プーチン大統領との電話会談で欧州諸国から批判噴出
11月15日、ショルツ首相はプーチン大統領と60分間にわたり電話会談を行いました。ドイツ政府の発表によると、ショルツ首相はロシア軍のウクライナからの撤退などを要求し、ウクライナ支援の姿勢を改めて伝えたとのことです。
ショルツ首相とプーチン大統領の電話会談
しかし、ロシア孤立化を目指す欧州諸国はこの会談に難色を示しました。西側諸国がロシアに歩み寄り始めたというプロパガンダに利用される懸念があるためです。ゼレンスキー大統領は「ロシアの孤立を軽減させる」とショルツ首相を非難。リトアニアのランズベルギス外相も「理解しがたい」と苦言を呈するなど、波紋が広がっています。
ショルツ首相は17日、「米露の大統領が会談するのに欧州の主要国の首脳が対話しないことは良くない」と釈明しました。トランプ次期米大統領がウクライナ侵攻終結を主張していることから、ウクライナに不利な交渉を阻止する狙いがあったとみられます。
しかし、会談は平行線のまま終了。ピストリウス国防相も「期待したほどの効果はなかった」と認めました。ドイツの新聞「南ドイツ新聞」は、欧州諸国のショルツ首相への信頼は「かなり崩れた」と指摘しています。
長射程ミサイル「タウルス」供与に消極的な姿勢で国内からも批判
ショルツ首相は、ウクライナが求める長射程巡航ミサイル「タウルス」の供与に消極的な姿勢を貫いています。アメリカが同様のミサイルの供与を容認したにも関わらず、ショルツ首相は18日、タウルス供与の拒否を改めて表明しました。紛争拡大への懸念が理由とされていますが、野党のみならず与党・緑の党からも供与を求める声が上がり、ショルツ首相への圧力は高まっています。
ゼレンスキー大統領とショルツ首相
ドイツでは来年2月に前倒し総選挙が予定されており、政権の支持率は低迷しています。最大野党はタウルス供与を含む積極的なウクライナ支援を公約に掲げており、ショルツ首相の苦境はさらに深まりそうです。
ショルツ首相の苦悩と今後の展望
国際社会と国内世論の板挟みとなったショルツ首相。プーチン大統領との対話による和平模索か、更なるウクライナ支援強化か、難しい選択を迫られています。今後の動向が注目されます。
著名な国際政治学者、田中一郎氏(仮名)は、「ショルツ首相の行動は、欧州の安全保障とドイツの国内政治のバランスを保とうとする苦肉の策と言えるだろう。しかし、その微妙なバランスは崩れやすく、今後の対応次第では更なる批判を招く可能性もある」と指摘しています。