たつき諒氏の著書『私が見た未来 完全版』(飛鳥新社)が、106万部超(電子版含む)のベストセラーとなり、社会現象を巻き起こしています。同書は、2025年7月に日本とフィリピンの中間あたりで海底が破裂し、東日本大震災の3倍にも及ぶ大津波が周辺を襲うという「予知夢」を描き、シンガポール在住YouTuberによる拡散動画は880万回再生に達するなど、その影響は現実の経済活動、特に日本の観光業界にも及び始めています。
予言拡散が訪日観光にもたらす打撃
「私が見た未来」の広がりは、日本のインバウンド観光に具体的な影響を与えています。日本政府観光局の発表によると、2025年5月の香港からの訪日外客数は前年同月比11.2%減少。この影響で、格安航空会社(LCC)のグレーターベイ航空は9月からの香港―米子便の運休を決定しました。鳥取県庁国際観光課は、鳥取砂丘や名探偵コナン関連施設が人気の鳥取県でも香港からの観光客が約4割減少したと報告。「鳥取砂丘 砂の美術館」も客足減を訴えています。予言による風評被害が、航空会社の路線運休や地域経済に直接的な打撃を与えています。
たつき諒著、大津波の予言で話題のベストセラー『私が見た未来 完全版』の書影。
気象庁と出版社の公式見解:デマと「夢」の区別
予言書への関心が高まる中、2025年6月下旬には鹿児島県のトカラ列島で群発地震が発生し、SNS上では予知夢との関連が取り沙汰されました。これに対し、気象庁の幹部は「いつ、どこで、どの規模かという予知の条件は、現在の科学技術では満たせない。現在広がっている情報はデマである」と明確に否定。地震予知の不可能性を強調しています。一方、書籍を出版した飛鳥新社は、「本書は著者の見た『夢』に基づく内容であり、いたずらに不安を煽る意図はない。災害に関しては、専門家のアドバイスに基づき慎重な対応が重要だ」と回答。あくまで個人的な「夢」の記録であるとの立場です。
たつき諒氏の『私が見た未来 完全版』は、社会現象としてインバウンド観光に具体的な影響を及ぼし、情報が容易に拡散する現代社会における信頼できる情報の重要性を浮き彫りにしました。この一連の動きは、公的機関が発信する正確な情報に基づき、冷静な判断を下すことの必要性を改めて示唆しています。災害への備えには、科学的根拠に基づく専門家の助言に従うことが不可欠です。
参考資料
- 週刊新潮 2025年7月17日号 (新潮社)
- 日本政府観光局 (JNTO)
- 気象庁 (JMA)