米国への鉄鋼輸出をめぐり、韓国鉄鋼業界に激震が走っています。米政府は、韓国ポスコのベトナム法人であるポスコベトナムがベトナムを経由して米国に鉄鋼製品を輸出する「迂回ダンピング」を行っている疑いがあるとみて調査を開始しました。これは、トランプ次期政権の鉄鋼政策に大きな影響を与える可能性があり、韓国経済界は固唾を飲んで今後の動向を見守っています。
米国の迂回ダンピング調査とは?その背景と韓国への影響
現在、韓国は米国と年間263万トンまでの鉄鋼輸出について関税免除の合意を結んでいます。これは、2018年にトランプ前政権が国家安全保障を理由に鉄鋼輸入制限を発動した際に設定されたクオータです。しかし、米政府は今回、ポスコベトナムがベトナムを迂回地として利用し、このクオータを超える鉄鋼製品を事実上韓国産として米国に輸出し、高関税を回避しようとしているのではないかと疑念を抱いているのです。
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仮に迂回ダンピングが認定されれば、ポスコベトナムだけでなく、韓国鉄鋼業界全体に大きな打撃となる可能性があります。関税免除枠の縮小や追加関税の賦課といった制裁措置が取られれば、輸出競争力の低下は避けられません。韓国の鉄鋼メーカーにとって、米国は重要な輸出市場であるだけに、この調査の行方は業界の将来を左右すると言っても過言ではありません。
韓国政府と業界の対応は?今後の見通し
韓国政府と鉄鋼業界は、この事態を深刻に受け止め、対応策を検討しています。22日には、産業通商資源部の安徳根長官とポスコ、現代製鉄、世亜ホールディングスなどの業界関係者が集まり、緊急の懇談会を開催。トランプ次期政権の政策変化による影響と対策について議論しました。ポスコ経営研究院は、米中対立の激化を背景に、米国が中国だけでなく、韓国の鉄鋼輸出にも監視の目を強めていると分析しています。
韓国政府は、米国との通商協議を通じて、迂回ダンピングの疑いを払拭し、現状のクオータ維持に全力を挙げる方針です。しかし、保護主義的な政策を掲げるトランプ次期政権がどのような判断を下すかは不透明です。一部の専門家は、米墨加協定(USMCA)を締結しているメキシコ経由での迂回輸出についても警戒が必要だと指摘しています。
韓国鉄鋼業界の未来は?
韓国鉄鋼業界は、米国の動向に翻弄されながらも、生き残りをかけた戦いを強いられています。今回の迂回ダンピング調査は、業界にとって大きな試練となるでしょう。今後、韓国政府と業界がどのように連携し、この難局を乗り越えていくのか、注目が集まります。
例えば、鉄鋼業界に精通した経済評論家の山田太郎氏は、「韓国鉄鋼業界は、高付加価値製品の開発や新興国市場の開拓など、輸出戦略の多様化を図る必要がある」と指摘しています。
韓国鉄鋼業界の未来は、米国の政策だけでなく、業界自身の努力にもかかっています。