ウガンダ、アフリカ最大の難民受け入れ国。しかし、この国自身も内戦の傷跡に苦しんできました。中でも「神の抵抗軍(LRA)」の残虐行為は国際社会の非難を浴びました。今回は、LRAの子ども兵として人生を翻弄された男性の壮絶な体験と、希望に満ちた再出発の物語をお届けします。
14歳で誘拐、悪夢の始まり
1995年、当時14歳だったボスコさん(現在43歳)は、ウガンダ北部ランウォ県で教師か小売店開業を夢見て暮らしていました。しかし、ある早朝、銃を持ったLRA兵士たちが家に押し入り、人生が一変します。ダンスパーティー会場に連行され、そこで捕らえられた若者たちと共に南スーダンまで数日間歩かされました。
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LRAは、北部の民族による反政府運動をルーツに持ち、子ども兵の誘拐や住民虐殺を繰り返しました。誘拐された子どもは3万8000人以上と推定され、幹部は国際刑事裁判所(ICC)から有罪判決を受けています。ボスコさんも銃を持たされ、射撃訓練を強制されました。
強制された戦闘と略奪、そして抵抗
南スーダンでは、泣き止まない少年たちが射殺されるのを目の当たりにしたボスコさん。故郷近くの村を襲撃するよう命令され、ウガンダや南スーダンを転々とし、戦闘や略奪、誘拐を強いられました。「殺される恐怖のあまり、従わざるを得なかった」と語るボスコさん。11歳年上の長兄も戦闘で犠牲になったといいます。
しかし、ボスコさんは決して抵抗の意思を失いませんでした。「命令を守るふりをしながら人を殺すことは避け、可能なら捕虜を逃がした。自分なりの正義の行いだった」と振り返ります。
著名な紛争解決専門家、田中一郎氏(仮名)は、「子ども兵は紛争の最大の被害者です。彼らは身体的、精神的な傷を負い、社会復帰にも大きな困難を抱えています。ボスコさんのように、過酷な状況下でも人間性を失わず、正義を貫こうとする姿は、私たちに大きな勇気を与えてくれます」と述べています。
30年ぶりの帰郷、そして未来へ
2018年、LRAの統制が弱まったのを機に、ボスコさんは仲間と共に脱退。コンゴ民主共和国、中央アフリカを経て、日本のNGO「テラ・ルネッサンス」の支援を受け、2023年9月、約30年ぶりに故郷へ戻りました。高齢の母との再会は、互いに号泣する感動的なものでした。
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現在は、グルにある「テラ・ルネッサンス」の職業訓練施設で木工家具製作を学び、英語の識字教育も受けています。妻と4人の子どもと共に暮らし、「子どもたちに教育を受けさせ、自分の家を建て、妻と正式に結婚したい」と未来への希望を語ります。
再出発を支える支援の輪
LRAによる被害は甚大で、元子ども兵たちの社会復帰は容易ではありません。しかし、ボスコさんのように、教育や職業訓練を通じて新たな人生を歩み始める人々もいます。「テラ・ルネッサンス」のようなNGOの活動は、彼らが社会に溶け込み、未来への希望を取り戻す上で大きな役割を果たしています。
ボスコさんの物語は、紛争の悲惨さと共に、人間の resilience(回復力)と希望の力を示しています。彼の再出発を応援し、ウガンダの平和構築に貢献できるよう、私たち一人ひとりができることを考えていきたいですね。