中国、スパイ活動3件阻止を発表 政府職員に国外からの脅威へ警戒促す

【AFP=時事】中国政府は10日、3件のスパイ活動を阻止したと発表し、政府職員に対し国外からの脅威に警戒を怠らないよう呼びかけた。これらの事案には、省政府職員が外国の工作員に色仕掛けで近づかれる、いわゆる「ハニートラップ」が含まれている。

中国、スパイ活動3件阻止を発表 政府職員に国外からの脅威へ警戒促す中国の国旗。政府が外国スパイ活動阻止と職員への警戒強化を発表。

中国の国家安全省は、外国のスパイが「中国に侵入し、秘密を盗もうとする活動をますます活発化させており」、その標的が公務員に集中していると指摘した。一方で、こうした工作の背後にいる具体的な国家については名指ししなかった。

同省は公式発表で、「信念の欠如、規律の緩み、規則意識の低下が原因で秘密漏洩が発生し、国家の安全と利益を損なう事態となっている」と警鐘を鳴らした。これは、職員個人の弱みがスパイ活動の突破口となり得ることを示唆している。

個別のスパイ事案の詳細

発表によると、阻止されたスパイ活動の具体的な事例は以下の通り。

事案1:ハニートラップと脅迫

「李」という姓の省政府職員が海外出張中、「綿密に仕組まれたハニートラップ」にかかった。この職員は「外国の情報員の魅力に抗しきれず」、親密な関係を撮影された写真で脅迫されたという。帰国後、情報員から公式文書を引き渡すよう強要された。この事案で、李職員は裁判により実刑5年の有罪判決を受けた。これは、個人的な関係や弱みが国家安全保障に対する深刻な脅威になり得る典型的なケースとして紹介されている。

事案2:秘密文書の売却

別の事例では、「侯」という姓の地方政府幹部が、秘密文書を密かに撮影し、ギャンブルで失った金銭を取り戻すために外国の情報機関にそれを売却していたことが明らかになった。侯氏はその後、刑事責任を追及されたが、判決の内容などの詳細は公表されていない。金銭的な動機が秘密漏洩につながる事例として注意喚起されている。

事案3:親族を介した情報漏洩

3件目は、将来を嘱望されていた若手職員に関するもの。この職員が親族に機密情報を漏らし、その親族が情報を写真に撮って海外の情報機関に送信していたとされる。この結果、当該職員は職を失った。本人が直接関与していなくても、親族など身近な関係者を経由して情報が漏洩するリスクがあることを示している。

国家安全省はこれらの事例を踏まえ、「秘密漏洩は、しばしば日常業務の些細な部分に潜んでいる」と述べた。また、「理想や信念が強固でなければ、最終的に外国のスパイ機関が仕掛けた犯罪の深淵に陥る恐れがある」と重ねて警告し、思想的な引き締めと規律厳守の重要性を強調した。

まとめ

今回の発表は、中国政府が国外からのスパイ活動に対して強い警戒感を持っていること、特に政府・党職員が主要な標的になっている現状を改めて浮き彫りにした。国家安全省は、ハニートラップや金銭的な誘惑、さらには身近な人間関係を利用するなど、多様化する手口への注意を促し、職員一人ひとりの綱紀粛正と機密保持意識の向上を求めている。これらの事例は、中国国内における国家安全保障体制の強化と引き締めの動きを反映していると言えるだろう。

【参照元】
AFP=時事 (Yahoo!ニュース)
https://news.yahoo.co.jp/articles/efab8294d32100883460fa77d625c6a2da736f89