時速194キロの死亡事故、危険運転適用はなぜ難しい?遺族の訴えと法改正のジレンマ

大分市で起きた時速194キロの自動車暴走による死亡事故。加害者への判決は、遺族や世論の怒りを買った。危険運転致死罪の適用を求める声が高まる一方、法曹界は複雑なジレンマを抱えている。本記事では、この事故を基点に、交通事故の厳罰化をめぐる現状と課題を探る。

速度超過だけが危険運転にあたるのか?

2021年2月、大分市で当時19歳の男性が運転する車が時速194キロで暴走し、衝突事故を起こした。この事故で、50歳の男性会社員が命を落とした。検察側は危険運転致死罪で懲役12年を求刑したが、弁護側は過失運転致死罪の適用を主張。SNS上では「懲役12年でも軽すぎる」「危険運転は殺人と変わらない」といった厳しい意見が飛び交った。

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確かに、時速194キロという速度は常識的に考えても危険極まりない。しかし、危険運転致死傷罪の適用には、「著しい危険を生じさせる速度」だけでなく、「制御困難な高速走行」や「他の車両等の著しい接近」といった要件を満たす必要がある。最高速度250キロの高級スポーツカーを運転していた加害者側は、「制御困難ではなかった」と主張しており、裁判所は難しい判断を迫られた。

厳罰化を求める声と法改正の現状

交通事故の厳罰化を求める声は、以前から根強く存在する。1999年の東名高速飲酒運転事故を契機に、危険運転致死傷罪が新設された。その後も、あおり運転など新たな問題が発生するたびに法改正が行われ、最高刑の引き上げや新たな罪の創設などが実施されてきた。

元検事で弁護士の田中喜代重氏(仮名)は、「世論の批判を受けて、法曹界は交通事故の厳罰化に尽力してきた」と語る。「しかし、法改正を繰り返しても、予期せぬ事故は発生し続ける。厳罰化だけで交通事故を根絶することは難しい」と指摘する。

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交通事故の判決が軽く感じられる背景には、危険運転致死傷罪の適用要件の厳格さや、過失運転致死傷罪との線引きの難しさがある。また、執行猶予付きの判決が多いひき逃げ事件についても、厳罰化を求める声が高まっている。

遺族の思いと社会の課題

今回の大分市の事故で、遺族は深い悲しみと怒りを抱えている。「なぜ危険運転致死罪が適用されないのか」「加害者は罪の重さを真摯に受け止めてほしい」と訴える。

交通事故は、被害者だけでなく、加害者の人生も大きく変えてしまう。厳罰化は確かに抑止力になるかもしれないが、それだけで問題は解決しない。ドライバーの意識改革、交通安全教育の充実、道路環境の整備など、多角的な対策が必要だ。

この事故を教訓に、交通事故の現状と課題について改めて考え、より安全な社会の実現に向けて取り組んでいかなければならない。