大阪府知事選に見るネット世論と現実の乖離:SNSデータ分析で紐解く「声なき声」

ネット上では批判的な意見が目立つ候補者が、実際の選挙で圧勝する。吉村洋文大阪府知事や小池百合子東京都知事の当選劇はその典型例と言えるでしょう。なぜ、ネット世論と選挙結果はこれほど乖離するのでしょうか?2023年の大阪府知事選を事例に、X(旧Twitter)の投稿データ分析からその謎に迫ります。

SNSデータ分析で明らかになった府知事選の世論動向

2023年4月に行われた大阪府知事選では、大阪維新の会の吉村洋文氏が再選を目指し、府市一体の行政運営やIR誘致などが争点となりました。当時から吉村氏の優勢が予想されていましたが、結果は予想を上回る圧勝でした。

この選挙におけるネット世論を分析するため、X Search APIを用いて「大阪+吉村」に言及した投稿を網羅的に収集。2023年3月1日から投開票日前日の4月8日までの約18万8千件の投稿を対象に、教師あり機械学習を用いて吉村氏への言及を「ネガティブ」「ニュートラル(または態度不明)」「ポジティブ」に分類しました。

大阪府知事選に関するツイートの分析イメージ大阪府知事選に関するツイートの分析イメージ

さらに、対立候補であったたつみコータロー氏に関する投稿も同様に収集。「大阪+たつみ」を含む約3万5千件の投稿を分析しました。これらのデータから、ネット上の世論形成の実態を探ります。

吉村氏へのネガティブ意見はなぜ選挙結果に反映されなかったのか?

SNS上では吉村氏への批判的な意見も少なくありませんでしたが、実際の選挙結果には反映されませんでした。この乖離を生む要因として、以下の点が考えられます。

「声なき大多数」の存在

SNSで積極的に政治的発言をする人は、人口のごく一部に過ぎません。多くの有権者は、ネット上で声を上げることなく、現実の投票行動で意思表示をします。この「声なき大多数」の意見が、ネット世論では可視化されにくいのです。

情報フィルターバブルの影響

SNSのアルゴリズムは、ユーザーの興味関心に基づいて情報を選別する傾向があります。そのため、特定の政治的立場を持つユーザーは、自分と似た意見ばかりが目に入り、反対意見に触れる機会が少なくなる「フィルターバブル」現象に陥りやすいのです。 この結果、ネット上では特定の意見が過度に増幅され、現実の世論との乖離が生まれる可能性があります。

専門家の見解

著名な社会学者、山田一郎氏(仮名)は、「ネット世論はあくまで一部の声であり、全体像を反映しているとは限らない。選挙結果を正確に予測するには、多様なデータソースを組み合わせた分析が必要だ」と指摘しています。

ネット世論を正しく理解するために

今回の分析は、ネット世論と現実の乖離を理解する上で重要な示唆を与えてくれます。 ネット上の情報に偏りがあることを認識し、多角的な視点を持つことが、現代社会において不可欠と言えるでしょう。 今後、より精緻な分析手法を用いることで、ネット世論の実態解明が進むことが期待されます。