銀行の貸金庫から顧客の財産が盗まれるというショッキングな事件が発生しました。三菱UFJ銀行の練馬支店と玉川支店に勤務していた行員が、十数億円もの金品を盗み取っていたのです。銀行の貸金庫は安全性の象徴とも言える場所であり、今回の事件は大きな衝撃を与えました。
銀行という世界の光と影
報道によると、犯人の行員は「店頭業務の責任者」だったとのこと。支店長代理の上、営業課長クラスのベテラン行員だったと推測されます。私はかつて大手都市銀行に14年間勤務していました。銀行員時代の経験から言うと、表沙汰になる不祥事は氷山の一角です。報道されない金銭がらみの不祥事は、メガバンク1行あたり年間50件以上はあるのではないでしょうか。
貸金庫のイメージ
不祥事の原因は、酒、女(男性行員の場合)、ギャンブル。これは他の業界と変わりません。むしろ、常にストレスにさらされ、お金を扱う銀行員は、誘惑に陥りやすい環境にあると言えるでしょう。過去にも女性行員による億円単位の窃盗事件が繰り返し発生しており、その多くは男性関係のもつれが原因のようです。
若手行員の葛藤と理不尽な現実
私自身も若手行員時代、理不尽な経験をしました。入行当初から国際部門を希望し、英語力も上位でしたが、最初の配属先は千葉県の郊外にある小さな支店。2カ所目の横浜支店でも、中小企業向けの融資担当を命じられました。
ある時、人事部の部長代理との巡回面接で配属に関する不満をぶつけました。すると、その話が同じ大学の先輩である人事部長に伝わり、呼び出されることに。居酒屋で「どんな仕事をしているんだ?」と聞かれ、中小企業への融資や個人顧客向けの預金集めの話をすると、「そんな仕事をさせるために採用したんじゃない!」と怒鳴られました。
納得のいかない思いでいっぱいでした。命じられた仕事をこなしているだけなのに、なぜ叱責されるのか。反論したくても、立場上何も言えませんでした。
銀行員の働く様子
信頼回復への道
今回の事件は、銀行に対する信頼を大きく揺るがすものです。銀行は、内部管理体制の強化、コンプライアンス教育の徹底など、再発防止策を講じる必要があります。「顧客第一」の精神を改めて胸に刻み、信頼回復に努めてほしいものです。
銀行業界の闇は深く、根深い問題です。今回の事件をきっかけに、業界全体が襟を正し、健全な発展を目指していくことを期待します。