西成、かつて「24時間シャブが買えた街」と呼ばれたこの場所で、今も違法薬物の影が消えない現実。特に、元技能実習生だったベトナム人による薬物販売の実態が問題となっています。なぜ彼らは故国を離れ、日本で違法行為に手を染めてしまうのでしょうか?貧困だけが理由なのでしょうか?それとも、そこにはもっと複雑な事情が隠されているのでしょうか?この記事では、その闇に迫ります。
技能実習生から薬物売人へ:転落の背景
かつて技能実習生として来日したグェン氏(仮名)。彼は今、西成で違法薬物を販売しています。取材に対し、グェン氏は「不法滞在になっても日本に残って、今までのネットワークを太くしたい。強制送還になるまで続けるつもり」と語りました。一体何が彼をそこまで駆り立てるのでしょうか?
西成の街の様子
グェン氏は、来日当初は真面目に働いていたといいます。しかし、生活の苦しさから、バイト先の先輩に勧められた大麻に手を出したのが転落の始まりでした。そして、ユーザーから売人へ。今では大麻だけでなく、MDMAや覚醒剤も扱っているというのです。
薬物販売の実態:需要の変化と稼ぎ
グェン氏によれば、現在西成で最も売れる違法薬物は大麻で、次にMDMA、覚醒剤は人気がないとのこと。かつて覚醒剤が主流だった時代とは様変わりです。この変化は、薬物使用者層の変化や、取締りの強化など、様々な要因が考えられます。
グェン氏は、仕入れた薬物のほとんどは仲間内で消費していると言いますが、知り合いの紹介があれば日本人にも売ることがあると認めています。「給料だけではやっていけない」と語るグェン氏ですが、薬物の売買による収入は給料を上回っているとのこと。生活の足しと言いながら、実態は薬物販売が主な収入源となっているようです。
複雑な事情:貧困、ネットワーク、そして強制送還への恐怖
グェン氏のケースは、決して特殊な例ではありません。多くの元技能実習生が、貧困や生活の苦しさから違法行為に手を染めているのが現状です。また、一度築いたネットワークや人脈を手放したくないという思いも、彼らを日本に留まらせる一因となっています。
さらに、強制送還への恐怖も大きな要因です。母国に帰れば、借金や家族の問題など、様々な困難が待ち受けている可能性があります。そのため、彼らはリスクを承知で日本にとどまり、違法行為を続けるのです。
薬物乱用の危険性を啓発するポスター
日本の薬物問題専門家、佐藤教授(仮名)は、「技能実習生に対する支援体制の強化が必要だ」と指摘します。「言葉の壁や文化の違いによる孤立感、そして生活の不安が、彼らを犯罪に走らせてしまう。社会全体で彼らを支える仕組みを作る必要がある」
元技能実習生による薬物販売問題は、複雑な社会問題を反映しています。貧困対策はもちろんのこと、技能実習制度の見直しや、外国人に対するサポート体制の充実など、多角的なアプローチが求められています。