1996年11月12日、ニューデリー郊外の夜空で想像を絶する悲劇が起きた。サウジアラビア航空とカザフスタン航空の2機が衝突、乗員乗客349名全員が犠牲となったニューデリー空中衝突事故だ。当時インドで暮らしていた私は、この衝撃的なニュース速報に言葉を失った。世界のメディアが緊急報道する中、インド国内のテレビ局は通常番組を放送し続けていたことに、違和感を覚えたのを今でも鮮明に覚えている。ジャーナリストとして、いてもたってもいられず、事故現場へ向かう決意をした。
現場への険しい道のり
事故現場はニューデリーから西へ100kmほど離れたチャルキ・ダドリ村。友人であり旅行会社社長のWさんに協力を依頼し、タクシーを手配しようとしたが、夜間の移動は危険が多いとのことで、Wさん自ら運転を申し出てくれた。助手席には護衛役の友人が乗り込み、私は後部座席に座った。道中はWさんから、インドの病院で腎臓を勝手に摘出されたという恐ろしい体験談を聞かされ、不安が募るばかりだった。ガタガタの未舗装道路を2時間半ほど走り、ようやくチャルキ・ダドリ村に到着した。
事故現場付近の様子を想像させる綿花畑の画像
惨状を目の当たりにして
月明かりに照らされた広大な綿花畑。一見すると平和な光景だが、そこには目を覆うばかりの惨状が広がっていた。機体の残骸、乗客の遺体、そして身の毛もよだつ異臭。これまで経験したことのない悪臭が鼻をつき、吐き気を催した。
遺体収容の光景
さらに衝撃的だったのは、遺体の収容方法だ。インド人作業員たちは、パワーショベルで遺体をすくい上げ、まるでゴミのようにトラックの荷台に投げ込んでいた。その光景は、人間の尊厳を軽んじているように見え、深い悲しみと怒りを覚えた。インドの文化や宗教観によるものなのかもしれないが、日本人である私には到底受け入れがたい光景だった。
インド社会の光と影
インドに44年間住み、その魅力に惹かれ続けてきた私だが、この事故はインド社会の光と影を改めて突きつけられる出来事だった。経済成長を続ける一方で、貧困や格差、そして人命軽視といった問題が根深く残っていることを痛感させられた。
専門家の見解
インド社会問題研究の第一人者であるA教授(仮名)は、「この事故は、急速な発展の過程で安全対策が後手に回っているインドの現状を象徴している」と指摘する。経済発展と安全意識の向上を両立させることが、今後のインドにとって重要な課題と言えるだろう。
インドの街並みをイメージした画像
この事故から20年以上が経過した現在、インドの航空安全は改善されているのだろうか。あの夜の惨劇を忘れず、教訓として活かすことが重要だと私は信じている。
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