「めまい」の原因の多くは「耳」にありますが、横浜市立みなと赤十字病院めまい平衡神経科部長の新井基洋氏によれば、じつは「心の状態」も深く関わっているそうです。
耳鼻咽喉科での治療だけでは症状が改善しない、そんな「ストレス性のめまい」は、どう対処すればいいのか。新井基洋氏の著書『1万人を治療してきた名医が教える 自力で治すめまいのリセット法』から、一部を抜粋・編集して解説します。
■めまいは、じつは「心の病」でもある
「心の状態」と「めまい」には、深い関わりがあります。実際、引っ越しや転職など、環境が変わったり、ショッキングな出来事をきっかけに、めまいの発作を起こす人がたくさんいます。
さらに悪いことに、めまいのつらさは他人には理解されないことが珍しくはなく、仕事を休んだりすると「さぼっているんじゃないの」などと、心ない言葉を投げかけられるようなこともあります。すると、症状がより重くなるという悪循環に陥ってしまいます。
病院をはしごしてもなかなか病名が判明せず、私のところにやって来て、つらいめまいの原因があきらかになっただけで、心が軽くなって表情が明るくなり、症状がやわらぐ人もいます。
このような例からもわかるとおり、ストレスはめまいの症状を悪化させることが医学的にあきらかになっていて、次にあげるような傾向がある人はめまいの発症率が高いことがわかっています。
・ネガティブな感情を抱きやすい人
・イライラしやすい人
・真面目で几帳面な人
ストレスが原因となる代表的なめまいの病気が、
・持続性知覚性姿勢誘発めまい
・メニエール病
・片頭痛性めまい
です。とくにメニエール病は「耳のストレス病」とも言われています。
私たちの耳は、じつは非常に繊細で、ストレスの影響をとても受けやすい器官です。強いストレスを感じたとき、心は壊れないように踏ん張れていたとしても、耳は耐え切れず、心よりも先に壊れてしまう人もいるのです。
ストレスが原因の場合、耳の治療だけでは治らず、心のケアも必要になります。ですから、本来、めまいを治療するときには、耳の状態だけではなく、心の状態も診る必要があるのです。