藤井聡太棋聖、通算30期達成で6連覇 将棋・棋聖戦

将棋の藤井聡太棋聖(22)=7冠=が、ヒューリック杯第96期棋聖戦五番勝負で挑戦者の杉本和陽六段(33)を3連勝で下し、棋聖6連覇を達成した。これにより、通算タイトル獲得数は大台の30期に到達した。対局は6月30日、千葉県木更津市の龍宮城スパホテル三日月で行われた。

難解な終盤戦が続いたものの、藤井棋聖は攻守にわたる深い読みで一気に相手を追い詰めた。会場となったホテルのプールから家族連れの歓声が響く中、対局室の静寂の中で藤井棋聖は東京湾の夕景を眺めながら、混とんとした最終局面を冷静に読み切っていた。

「終盤はかなりきわどく、△2七銀で初めていけると思った」。自身の真骨頂である深い読みでリードを築いたが、勝利を確信したのは最後の84手目だったと振り返る。この日の対局では、軽やかな着心地の沖縄・宮古織の羽織と、鮮やかなライトグリーンの愛知県の伝統工芸品である有松絞りの和服を着用していた。

2連敗で後がない杉本六段は、得意戦法である振り飛車の一種、中飛車を5手目▲5八飛で採用し、勝負に出た。これに対し藤井棋聖は5筋の飛車を警戒し、金銀を中央に寄せる形で対応。以降、両者によるにらみ合いが続いた。

終盤に入り、62手目△5六歩の攻めの手から一気に攻防が激化した。杉本六段も75手目▲3二金と王手で応じた。藤井棋聖はこの局面で「迷った」と語るが、76手目△1二玉と金を取らずにかわす絶妙な一手で主導権を握り、勝利への道を切り開いた。

藤井聡太棋聖が棋聖戦6連覇を達成し、指で「6」のポーズを取る様子藤井聡太棋聖が棋聖戦6連覇を達成し、指で「6」のポーズを取る様子

昨年、藤井棋聖は棋聖戦5連覇を果たし、自身初の永世称号となる「永世棋聖」の資格を獲得した。そしてこの日の第3局での勝利により、棋聖6連覇とともに通算タイトル獲得数で節目の30期に到達した。2020年の第91期棋聖戦で初タイトルを獲得して以来、約5年でのこの偉業達成について「大変なシリーズばかりだったので幸運もあった」と謙虚に総括。昨年6月の第9期叡王戦五番勝負で敗れ、全8冠から初の失冠を経験したが、「タイトル戦の経験を通して成長している」と語り、失冠を成長の糧にしていたことを明かした。

次なるタイトル戦は、7月5日、6日に愛知県小牧市で始まる第66期王位戦七番勝負となる。挑戦者は永瀬拓矢九段(32)。この王位戦を防衛すれば、渡辺明九段(41)に並ぶ歴代4位タイとなる31期目のタイトル獲得となる。藤井棋聖は今後の戦いについて「ここからさらに積み重ねるために実力が問われる」と述べ、さらなる精進を誓った。

棋聖6連覇と通算30期達成は、藤井棋聖の圧倒的な実力と経験の証である。間もなく始まる王位戦七番勝負で、さらなる記録更新を目指す戦いが注目される。

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