別府ひき逃げ殺人事件から3年 生存した被害男性「生きていてよかった」託された命と消えぬトラウマ

2022年6月29日に大分県別府市で発生した別府ひき逃げ殺人事件は、尊い大学生2名の命を奪った凶悪事件です。被害者の大学生2名に対する殺人罪、殺人未遂罪、道路交通法違反の容疑で現在も八田與一容疑者が全国に指名手配されています。これまでに1万件を超える情報提供が寄せられていますが、八田容疑者の足取りはいまだにつかめていません。事件発生から3年が経過した今、奇跡的に一命を取り留めた被害男性(以下、Bさん)が、当時のこと、そして現在の心境を初めて語りました。

事件発生からの時間経過とBさんの心境の変化

事件から約半年が経過した2023年2月の取材で、Bさんは深い苦悩を抱えていました。「僕だけ結果的に生き残って、こんないいやつが向こうに逝っちゃって『なんで俺だけ?』っていうのはすごい思いました」と、生存者としての複雑な胸中を明かしています。

別府ひき逃げ殺人事件で指名手配されている八田與一容疑者の顔写真別府ひき逃げ殺人事件で指名手配されている八田與一容疑者の顔写真

事件から1年後の取材では、Bさんは「僕からしたらあの時から何も変わっていない。悔しいですね」と、事件が心に残した深い傷跡を語りました。しかし、その言葉の中には微かな変化も見られました。「事件が起こるまでは自分のために、自分がいい思いをするためにすごいぜいたくな暮らしをして、自分の利益を優先して考えていたが、事件があってすごく周りから助けられた。それがあって『自分のために』が『人のために』という考えに変わって、お世話になった人にどうやったら恩返しができるか。経営者になりたいという夢は変わらないが、なりたい理想像が本当にガラッと変わった」と、他者への感謝と将来への前向きな姿勢を示すようになりました。

事件から3年、Bさんの現在

事件から3年が経過した今年6月、改めてBさんの自宅を訪ねました。Bさんはその後、留学も経験し、現在は大学4年生として学業に励んでいます。部屋には中森明菜や甲斐バンドといった昭和の楽曲のレコードが置かれ、彼の趣味が垣間見えました。大のバイク好きであるBさんは、事件時に押収されたバイクの代わりに、アルバイトで貯めたお金で新たなバイクを購入していました。

今回、Bさんは「顔を出して事件についてもっと世間に知ってもらいたい」という強い希望を口にしました。「亡くなった友達に対して自分が最大限できることを考えたときに、自分が顔を出して声をあげることが一番説得力がある。みんなにもっと事件のことを重要視してもらえる。あの事件を経験している身からすると、すごく聞いてほしいことだったり、悩み抜いた末の結論」。しかし、八田容疑者が現在も逃走中であるため、周囲からの心配の声に配慮し、今回は顔出しを断念したとのことです。

「事件の前の経緯とかはやはり僕しか語れないので。本当にそこは生きていてよかった。彼がその後、その分を託して僕を生かしてくれたんだなと思う」と、Bさんは自らの生存が持つ意味について深く語りました。

事件の痕跡と親友との思い出

Bさんは、事件当日にリュックに入れていたというパソコンを見せてくれました。跳ね飛ばされた際、このパソコンが衝撃を和らげてくれたと振り返ります。しかし、パソコンは「もう使えない。全くうんともすんとも…」と、その時の凄まじい衝撃を物語っています。さらに、事件後に警察が届けてくれたという、真っ二つに割れたバイクのエンブレムも見せてくれました。これは、彼が乗っていたバイクの一部であり、事件の生々しい痕跡です。

事件で亡くなった親友のAさんとは、将来の夢を語り合い、キャンプやツーリングを楽しむなど、共に青春を謳歌しました。事件当日も2人は湯布院でツーリングを楽しんでいました。Bさんは写真を見ながら「ここに彼が行きたいと言って、一緒にここへ行った」「楽しかったですね、これも」「(事件が起きたのは)この直後ですね…」と、楽しかった日々、そして突然訪れた悲劇を振り返りました。「今になったから思えることなんですけど、救われた命というか、彼が僕に託してくれた命だと僕はすごく思っているので」と、親友への深い思いを改めて語りました。

トラウマとの闘い、そして八田容疑者への思い

事件のトラウマは、今もBさんを苦しめています。「バイクに乗っているときでも常に後方は確認して。やっぱりミラーとかも無意識に見てしまう。事件現場に花を供えに行ったりとか、用事があって近くを通るときとかは、やはり事件のときがすごいフラッシュバックしてくる」と、日々の生活に影を落とすトラウマについて明かしました。しかし、彼は強く生きています。「自分の人生を一生懸命頑張る、という風に自分は心に決めたので、そこはトラウマを乗り越えながら自分はいま生きている」と、力強い言葉で現在の決意を語りました。

八田容疑者に対する思いについては、正直な胸の内を吐露しました。「八田がいま目の前に現れたら正直自分が何をするかはちょっとわからない。本当だったら僕の亡くなった友人が味わった苦しみ、痛みを八田に味わわせたい」と、怒りを滲ませました。同時に、「なんでこの事件を起こしたのか、どうやって逃げたのかが謎。その『なんで』という部分をすごく聞きたい」と、事件の動機や逃走経路に対する疑問を投げかけました。

社会への願いと情報提供の呼びかけ

Bさんは、別府ひき逃げ殺人事件について、全国に広く知られていると思いつつも、一部には遠い場所の出来事として捉える人もいるかもしれないと感じています。「でもみなさん一度考えてみてほしいが、自分のすごく大事な友人だったりとか、本当にかけがえのない家族や恋人、そういった人が一瞬の出来事で命を絶たれてしまう、ということをみなさん一回想像してみてほしい。自分も一瞬でかけがえのない友達を亡くして、本当につらかった。できればこれからみなさんこういう経験をしてほしくない。今回の事件を最後にこういった凶悪な事件が本当に起きてほしくないというところは、心からの僕の願い。誠に勝手ではありますけど、自分のことのように事件のことをぜひ受け取ってほしい、というのが一番の願い」と、自らの悲痛な経験から生まれた社会への切なる願いを語りました。

別府ひき逃げ殺人事件に関する情報提供は、引き続き別府警察署(電話番号: 0977-21-2131)で受け付けています。また、X(旧Twitter)のABEMAニュース番組公式アカウント(@News_ABEMA)のダイレクトメッセージでも情報提供を募集しています。些細な情報でも、事件解決の糸口となる可能性があります。

情報提供先

  • 別府警察署: 0977-21-2131
  • ABEMAニュース番組公式X(旧Twitter): @News_ABEMA (ダイレクトメッセージ)

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