日本のバブル崩壊後の「失われた世代」を彷彿とさせるような、韓国の若年層における深刻な社会問題が浮き彫りになりつつあります。仕事も学業もしていない、いわゆるニート状態の若者が急増しているというのです。一体何が起きているのでしょうか?本記事では、韓国銀行の報告書を基に、この問題の実態と将来への影響について詳しく解説します。
韓国の若者の「休息」状態…その背景にあるものとは?
韓国銀行が発表した報告書「若年層『休んでいる』人口増加の背景と評価」によると、韓国経済全体としては雇用指標は安定しているものの、就業も求職もしていない「非経済活動人口」のうち「休んでいる」と回答した若年層が2024年に入り急増していることが明らかになりました。
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具体的には、2024年第3四半期の15歳から29歳の「休んでいる」人口は42万2000人に達し、前年同期比で25.4%もの大幅な増加となっています。この増加率は、他の年齢層と比較しても突出しており、深刻な状況を示唆しています。高齢者や働き盛りの世代では「休んでいる」人口の割合は安定している一方で、若年層だけがコロナ禍以降増加の一途を辿っているのです。
就業経験後の離脱…非自発的な「休息」の増加
報告書では、この異例の現象について、「失業率などの他の雇用指標に大きな変化がないにも関わらず、若者の『休んでいる』人口が急増しているのは異常事態だ」と指摘しています。そして、この「休んでいる」状態にある若者の多くは、過去に就業経験を持つ者であり、一度仕事に就いた後、求職活動自体を諦め、労働市場から離脱しているケースが増えていることを明らかにしています。
さらに、驚くべきことに、「休んでいる」若者の約7割が、自らの意思ではなく、やむを得ない事情で「休んで」いると回答しているのです。つまり、働きたくても働けない状況に追い込まれている若者が増加しているという厳しい現実が浮き彫りになっています。
長期化する「休息」…ニート化のリスクと潜在的な労働力損失
この「休んでいる」状態が長期化すると、若者たちが労働市場に復帰する意欲を失い、ニートとして定着してしまうリスクが高まります。報告書によれば、「仕事を辞めて1年以内の若者の90%は再び働きたいと考えているが、1年以上経過するとその割合は50%にまで低下する」というデータが示されています。
これは、韓国経済にとって潜在的な労働力損失となるだけでなく、社会保障制度への負担増や社会不安の増大にも繋がりかねない深刻な問題です。韓国社会全体で、若者たちが安心して働き、将来に希望を持てるような環境づくりが急務となっています。
未来への課題…若者を支える社会システムの構築
韓国の若年層を取り巻く厳しい雇用環境は、日本にも通じるものがあります。経済成長の鈍化、雇用の不安定化、将来への不安など、若者たちが直面する課題は複雑かつ多岐にわたります。
韓国政府は、若年層の雇用支援策を強化するなど、対策に乗り出していますが、抜本的な解決には至っていません。若者たちが希望を持って未来を描ける社会を実現するためには、企業、教育機関、そして社会全体が一体となって、若者を支えるシステムを構築していく必要があると言えるでしょう。