女優・秋吉久美子さん、作家・下重暁子さん対談:母の死、看取り、そして「生き方」と「死に方」

母との別れは、誰しもがいつか経験する人生の大きな出来事です。70歳を迎えた女優の秋吉久美子さんと、88歳の作家の下重暁子さんが、新著『母を葬(おく)る』で対談し、それぞれの母との別れ、看取りの経験、そして「生き方」と「死に方」について語り合いました。二人の言葉からは、深い悲しみと同時に、母から受け継いだ強さ、そして自分らしい生き方を見つけるヒントが見えてきます。

母の死、それぞれの経験

秋吉さんは、母の死に至るまでの半年間を「こんなはずじゃなかった」と思うことの連続だったと振り返ります。心の準備ができないまま、波乱に満ちた看取りの日々を過ごしたそうです。

一方、下重さんは、脳梗塞で倒れた母を1週間で亡くしました。自身が高熱で看病もままならないまま、母を見送ることになったといいます。下重さんは、生前「娘に面倒をかけたくない」と語っていた母の言葉通り、苦労も悲しみも残さずに逝った母を、ある種の覚悟を感じながら見送ったと語ります。

秋吉久美子さんと下重暁子さんの対談の様子秋吉久美子さんと下重暁子さんの対談の様子

「生き方は死に方」、そして「死に方は生き方」

下重さんは、福祉に生涯を捧げた自身の母を深く尊敬していた祖母と同じ日に亡くなった母を例に、「生き方は死に方」、そして「死に方は生き方」だと語ります。願い続けることで、その生き方の証となる。そして、その生き方が死に方にも反映されるというのです。

下重さんの祖母は、生前「お母さんと同じ日に死にたい」と願い続け、実際にその願いを叶えました。これは、強い意志を持って生きた証であり、その生き方が死に方にも繋がったと言えるでしょう。

母を看取った後も続く、母との対話

秋吉さんは、母を看取ってから数十年経った今でも、母を葬ることができていないと語ります。それは、母との思い出、教え、そして存在が、今もなお秋吉さんの心の中で生き続けているからでしょう。

秋吉久美子さんと下重暁子さん秋吉久美子さんと下重暁子さん

下重さんもまた、夢に母が出てくることはないものの、母の教えや生き方は、自身の生活の指針となっていると語っています。

二人の対談は、母との別れという普遍的なテーマを通して、自分らしい生き方、そして「死」との向き合い方について深く考えさせるものとなっています。 私たちも、二人の言葉を胸に、自分の人生、そして大切な人との関係性について改めて見つめ直してみるのも良いかもしれません。