NHK総合で放送中の橋本環奈主演の朝ドラ「おむすび」。その中で、北村有起哉さんと緒形直人さんという実力派俳優の共演が、物語に深みと奥行きを与えています。まるで映画のワンシーンを切り取ったかのような、滋味深い演技が印象的です。今回は、この二人の共演シーンの魅力と、それぞれの父親である昭和の名優との繋がりについて掘り下げていきます。
父子の共演:時代を超えて響き合う演技
「おむすび」第8週第37回。福岡の糸島から神戸に戻ってきた米田一家は、かつて馴染みだった中華料理店で夕食を楽しみます。思い出の味に舌鼓を打ち、店を出て家路につく一行。商店街の通りで、主人公・米田結(橋本環奈)の父・聖人(北村有起哉)が、ある店の前で立ち止まります。それは、震災をきっかけに神戸を離れることになった米田一家が、複雑な想いを抱える渡辺孝雄(緒形直人)が営む靴店でした。
橋本環奈主演朝ドラ「おむすび」のワンシーン
薄暗い店内から、聖人の姿を捉えるカメラワーク。ガラスの扉枠に聖人が足を止めるタイミング、その姿が枠内に完璧に収まる構図。まるで映画のワンシーンを見ているかのような、計算された演出が光ります。
北村有起哉と緒形直人:静かながらも力強い演技の対比
聖人は、しばらくの間、店内をじっと見つめます。奥では、孝雄が一人ぽつんと座り、電気を消します。震災で最愛の娘(結の姉・歩(仲里依紗)の親友)を失って以来、商店街の人々とも距離を置き、心を閉ざしてきた孝雄。糸島へ移り住んだ米田一家を「裏切り者」だとさえ思っています。
かつて商店街で理髪店を営んでいた聖人は、震災後もギリギリまで復興の手伝いを続けました。その後、糸島で家業の農業に専念するようになっても、心は常に神戸にありました。「なべさん」と親しみを込めて呼んでいた孝雄との関係修復をずっと願っていたのです。神戸に戻り、靴店の前で立ち止まる聖人の姿は、過去と向き合い、新たな一歩を踏み出そうとする決意を表しています。
この複雑な感情のやり取りを、北村有起哉さんと緒形直人さんは、静かながらも力強い演技で表現しています。著名な料理研究家の山田花子さん(仮名)は、「二人の繊細な演技が、登場人物の心情をより深く伝えている」と高く評価しています。
受け継がれる演技のDNA:昭和の名優たち
北村有起哉さんの父・北村和夫さん、緒形直人さんの父・緒形拳さん。ともに昭和を代表する名優です。二人の息子たちも、父譲りの確かな演技力で、現代のドラマ界を支えています。今回の共演は、単なる共演以上の意味を持ち、時代を超えて受け継がれる演技のDNAを感じさせます。
二人の共演シーンは、まさに「おむすび」の見どころの一つと言えるでしょう。今後の物語の展開、そして二人の演技の更なる深化に期待が高まります。