【日中関係の現状】複雑化する中国の反日感情:SNS、政府、そして民衆の本音とは?

日中関係は、常に複雑な様相を呈しています。近年の言論NPOの調査では、日本人に良くない印象を持つ中国人が87.7%と、高い数値を示しています。果たして、中国の反日感情のリアルとはどのようなものなのでしょうか?本記事では、現地の様子や専門家の分析を交えながら、多角的に考察していきます。

中国の若者と「city不city」:新たなトレンドと政府の思惑

中国では今、若者の間で「city不city」(おしゃれかどうか)という英語と中国語を組み合わせた造語が流行しています。アメリカ人インフルエンサーが発信したこの言葉は、わずか3日で1億回再生を記録。中国外務省報道官もこの流行語を用いて、観光誘致を促進する姿勢を見せています。実際に、日本を含む38カ国へのビザ免除措置も実施されました。

中国の街並み中国の街並み

しかし、その一方で、サッカーW杯予選での日本人サポーターへの暴動寸前の騒ぎや、深センでの日本人男児刺殺事件など、深刻な問題も発生しています。明るい兆しと暗い影が混在する現状と言えるでしょう。

尖閣問題以降の反日感情:政府のプロパガンダとSNSの影響

2012年の尖閣問題以降、日中関係は悪化の一途を辿りました。習近平政権下では、抗日戦争関連の記念日を制定するなど、反日姿勢を強調する動きが見られました。その後も、「日本人お断り」の飲食店や日本人観光客への暴言事件など、様々な問題が勃発しています。

尖閣諸島尖閣諸島

中国で長年駐在経験のある商社マンは、日常生活で危険を感じたことはないと語ります。むしろ、スマホ一つで生活できる利便性を享受していたとし、反日報道には残念な思いを抱いていると述べています。「個人の考えと全体の考えは違う。国同士の関係悪化は避けるべきだ」という彼の言葉は、多くの示唆を含んでいます。

中国在住者の視点:ダブルスタンダードな現状とSNSの力

中国・大連に6年間在住した経済ジャーナリストの浦上早苗氏は、中国の反日感情について「ダブルスタンダード」な側面があると指摘します。日中関係が悪化しても、多くの中国人は日本を訪れていますが、それをSNSでは公表しない傾向があるといいます。批判を恐れて、空気を読んでいるのだと浦上氏は分析します。

経済ジャーナリスト浦上早苗氏経済ジャーナリスト浦上早苗氏

浦上氏自身も、東日本大震災直後に心無い言葉を浴びせられた経験があるものの、直接的な敵意を感じたことは一度もないと語ります。反日感情は個人差が大きく、身の危険を感じることはないが、差別されていると感じることはある、というのが彼女の率直な感想です。

また、中国では9月18日が「国恥の日」とされていますが、若い世代はそれほど関心がないようです。浦上氏は、反日感情の高まりは、尖閣問題や処理水問題、靖国参拝など、特定の出来事をきっかけとする一時的なうねりだと分析。かつては政府のプロパガンダが大きな影響力を持っていましたが、現在はSNSが大きな役割を担っていると指摘します。中国政府はSNSの虚偽投稿を取り締まっていますが、反日投稿については管轄外としているのが現状です。

浦上氏は、反日感情の背景には、大国のプライドと高まる愛国心、そしてアメリカからの制裁による被害者意識があると分析しています。中国人は日本に対して特別な関心を持っているわけではないものの、特定の出来事をきっかけに感情が激化しやすいと指摘しています。

複雑に絡み合う日中関係:未来への展望

中国の反日感情は、政府のプロパガンダ、SNSの拡散、そして個人の感情など、様々な要因が複雑に絡み合って形成されています。一概に「反日」と断定することはできず、多角的な視点で捉える必要があります。今後の日中関係を健全に発展させていくためには、相互理解を深め、冷静な対話と交流を継続していくことが重要と言えるでしょう。