政権が崩壊したシリアでは、反体制派への権力移行が始まりました。注目を集めているのがアサド大統領の亡命を受け入れたプーチン氏です。どんな思惑があるのか、専門家に聞きました。
■シリア反体制派に権力移行 アサド氏が亡命
アサド政権下で捕えられた受刑者が反体制派により解放されています。
長い間、シリア国民を恐怖に陥れてきた刑務所では、収容された家族などを探す人であふれていました。
親子2代にわたり半世紀余りに及んだアサド政権が終わり、国外に逃れていた多くの難民がシリアへと戻り始めています。
シリアと接する隣国・ヨルダンの検問所には、多くの人が訪れていました。
ヨルダンからシリアに戻る男性
「シリアの思い出は、前政権による悲劇と虐殺です。たくさんありすぎて、どれだけ話しても話しきれません」
難民の中には避難した後に生まれ、祖国を知らずに育った子どもたちも多くいます。その子どもたちに見せたいのが…。
シリア難民
「もちろん、昔住んでいた場所です。内戦が始まった時に避難してきたから」
新体制に希望を抱くシリアの人々。そんな中、反体制派「シャーム解放機構」の指導者がアサド政権の首相と会談しました。反体制派の行政機構「シリア救国政府」に権力を移行することで合意したといいます。
■なぜ亡命受け入れ? プーチン氏の思惑は
一方、アサド政権を支えてきたロシアでは変化が起こっています。モスクワのシリア大使館や、ロシア第二の都市・サンクトペテルブルクのシリア領事館で反体制派の旗が掲げられたのです。
プーチン政権や国営メディアは、反体制派が勝利宣言した8日以降、それまで反体制派に使っていた「テロリスト」という呼称をやめました
ロシア側の“歩み寄り”の姿勢でしょうか?新しく権力を握る反体制派と「話し合う必要がある」としています。
しかし一方で、反体制派が敵対しているアサド大統領のロシアへの亡命を許しているのです。
東京大学 先端科学技術研究センター
小泉悠准教授
「ロシアにしてみると、ここでアサドさん一家もう知りません、さようならとなった場合は、ロシアの信用は地に落ちる。本来でいえばロシアが大々的に軍事介入して、アサド政権を寸前のところで救うというくらいまでやれば、これは大変なプレゼンス(存在感)になるが、今ウクライナの戦争でそれどころではないというところがロシアのつらいところだと思う」
ロシアは今、様子を見ている状態だと言います。
小泉准教授
「ロシア外務省の声明で『すべての反体制派勢力と話はしている』。今は様子見プラス、新しい政権に対して関係性を恐らく作ろうとしているのではないかと。そういうフェーズ(段階)なんじゃないかと思います」
テレビ朝日