韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が戒厳令に言及した対国民談話をめぐり、波紋が広がっている。談話の中で尹大統領は、戒厳令発令を「国を守るための高度な政治的判断」と正当化し、国会の解除要求だけで統制できるものではないと主張した。
野党議員パク・ジウォン氏、大統領を「狂人」と批判
共に民主党の朴智元(パク・ジウォン)議員は、尹大統領の談話放送中に自身のFacebookで「尹錫悦、まだ狂っている」と痛烈に批判。「狂人に大統領職の軍統帥権を1秒でも任せることはできない」と述べ、高位公職者犯罪捜査処と警察に対し、尹大統領を内乱首魁として逮捕するよう要求した。
尹錫悦大統領談話の様子
戒厳令発言の背景と波紋
尹大統領の戒厳令発言は、国政運営の行き詰まりを背景に発せられた。大統領は談話で、国政マヒを「亡国的な非常事態」と表現し、戒厳令発令は国政正常化のための法的権限の行使だと主張した。しかし、この発言は野党のみならず、一部の与党議員からも批判の声が上がっている。戒厳令は民主主義の根幹を揺るがす行為であり、大統領の独断的な判断で発令されるべきではないとの指摘が相次いでいる。憲法学者からも、大統領の解釈は憲法の趣旨に反するとの意見が出ている。
戒厳令とは何か?韓国憲法における規定
戒厳令とは、軍隊が治安維持や公共の秩序維持のために、一時的に行政権や司法権の一部を行使することを認める制度である。韓国憲法にも戒厳令に関する規定があり、非常事態において大統領が国会の承認を得て発令することができる。しかし、戒厳令の発令は国民の基本的人権を制限する可能性があるため、厳格な要件と手続きが定められている。今回の尹大統領の発言は、こうした憲法の規定を軽視するものではないかとの懸念が広がっている。食糧安全保障の専門家であるキム・ヨンチョル氏(仮名)は、「戒厳令は国民生活に大きな影響を与えるため、慎重な判断が必要だ」と指摘している。
今後の韓国政局への影響
尹大統領の戒厳令発言は、今後の韓国政局に大きな影を落とす可能性がある。野党は尹大統領の退陣を求める動きを強めており、与野党の対立はさらに激化することが予想される。国民の間でも戒厳令発言に対する賛否が分かれており、社会の分断が深まることも懸念されている。今後の政局の行方は、大統領の対応次第で大きく左右されるだろう。
韓国の国会の様子
韓国政治の専門家であるパク・スンチョル氏(仮名)は、「今回の発言は、韓国社会の民主主義の成熟度を試す試金石となるだろう」と述べている。