韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が国民向け談話を発表し、波紋を広げています。発端となったのは、3日に発令された「非常戒厳令」。野党からは「反国家的悪行」と激しい非難を浴びていますが、尹大統領はこの談話で、憲法に則った正当な決断であったと改めて主張しました。今後の政局を占う上で、極めて重要な局面を迎えています。
非常戒厳令発令の背景と尹大統領の主張
尹大統領は、非常戒厳令発令は「高度な政治的判断」に基づくものであり、決して憲政秩序の破壊を意図したものではないと強調。北朝鮮による選挙管理委員会へのハッキング攻撃を受け、システム点検の必要性があったにも関わらず、選挙管理委員会が対応を拒否したことが発令の理由だと説明しました。
韓国の尹錫悦大統領(大統領府提供)
しかし、与党「国民の力」の韓東勲(ハン・ドンフン)代表は、この談話は「内乱を自白する内容」だと批判。党として弾劾訴追に賛成する姿勢を表明しました。 政治評論家の金智妍(キム・ジヨン)氏(仮名)は、「尹大統領の説明は説得力に欠け、国民の理解を得られていない。かえって火に油を注ぐ結果になった」と指摘しています。
野党の反発と再提出された弾劾訴追案
最大野党「共に民主党」は、7日に否決された尹大統領の弾劾訴追案を12日に再提出。採決は14日午後に行われる見通しです。尹大統領は談話の中で「最後の瞬間まで国民と共に闘う」と述べ、弾劾審判に臨む姿勢を示しました。この発言を受け、弾劾訴追案可決の可能性が高まっているとみられています。
与党内の動向と弾劾可決の可能性
7日の弾劾訴追案採決では、多くの与党議員が議場から退場し、投票数が成立要件に達しませんでした。このボイコットに対する世論の批判は強く、与党内では尹氏の早期退陣を求める声が上がっていました。2025年2~3月の退陣案も浮上していましたが、今回の談話で尹大統領はこれを拒否する考えを示しました。
与党内では、次回の弾劾訴追案採決には参加すべきだという意見が強まっています。既に賛成票を投じると表明した議員もおり、造反者はさらに増える可能性があります。弾劾訴追案の可決には、在籍議員(定数300)の3分の2以上の賛成が必要。野党と無所属議員192人に加え、与党から8人が造反すれば可決されます。
警察の捜査本格化と今後の政局
警察は11日、大統領府の家宅捜索に着手するなど、尹大統領に対する捜査を本格化させています。弾劾訴追案の行方、警察の捜査の進展、そして今後の政局は予断を許さない状況です。 韓国政治に詳しい朴哲洙(パク・チョルス)教授(仮名)は、「今後の政局は、弾劾訴追案の可決、警察の捜査結果、そして国民世論の動向によって大きく左右されるだろう」と分析しています。
今後の展開から目が離せません。