日本の安全保障にとって重要な役割を担う馬毛島。その存在は、近年ますます注目を集めています。中国の海洋進出が顕著になる中、この小さな島は日米同盟の象徴として、そして日本の防衛戦略の要として、その重要性を増しています。この記事では、馬毛島の歴史、基地建設の現状、そして未来への展望について詳しく解説します。
馬毛島の歴史:民間企業の思惑から防衛の要へ
鹿児島県南部に位置する馬毛島。種子島から船で約40分の距離にあるこの無人島は、面積約8平方キロメートル、周囲約16キロメートルという小さな島です。しかし、その地理的な位置から、日本の国防にとって非常に重要な場所となっています。
馬毛島の航空写真
実は、馬毛島はこれまで様々な民間企業の思惑に翻弄されてきました。1970年代には、平和相互銀行がレジャー施設建設を目的として買収しましたが、オイルショック後の不況により計画は頓挫。その後、核燃料廃棄物処理場や自衛隊レーダー基地としての活用も検討されましたが、いずれも実現には至りませんでした。
1980年代には、平和相互銀行がレーダー基地建設を巡り、政界工作を行っていた疑惑が浮上。「馬毛島事件」として国会議員を巻き込む一大スキャンダルへと発展し、同行は島を手放すことになりました。
その後、遠洋マグロ漁船乗りから身を起こし、建設会社を経営していた立石勲氏が1995年に馬毛島を4億円で買収。立石氏は代表を務める開発会社「タストン・エアポート」を通じて、島の所有者となりました。
立石氏と馬毛島の改造:150億円を投じた壮大な計画
立石氏は、馬毛島が日本の防衛拠点として重要な役割を果たすと確信し、私財を投じて島の改造に着手しました。滑走路の建設など、何もなかった島に莫大な費用を投じ、その額は150億円以上とも言われています。関係先からの融資や借金を重ねて、工事費用に充てていたとされています。
建設中の馬毛島基地
なぜ立石氏はそこまでして島の造成に情熱を注いだのでしょうか。その背景には、日本政府への売却を見据えていたという見方があります。立石氏は、政府筋への売り込みを積極的に行っていたとされ、実際に2011年の日米「2+2」で馬毛島が米軍空母艦載機の離着陸訓練(FCLP)の候補地として初めて公式に言及されました。
しかし、国が提示した購入価格は40億円程度であり、立石氏にとっては到底受け入れられる金額ではありませんでした。そのため、金額交渉は難航し、最終的には政府が土地収用法に基づき買収しました。
馬毛島基地の未来:日米同盟の強化と地域経済への影響
現在、馬毛島では自衛隊基地の建設工事が進められており、2030年3月の完成を目指しています。この基地は、米軍空母艦載機の離着陸訓練地として活用される予定であり、日米同盟の強化に大きく貢献すると期待されています。
専門家の中には、「馬毛島は、中国の海洋進出を牽制する上で重要な拠点となる」と指摘する声もあります。地理的に中国、台湾に近い馬毛島は、有事の際には戦略的に重要な役割を果たすことが予想されます。
一方で、基地建設による地域経済への影響も注目されています。建設工事による雇用創出や関連産業への波及効果が期待される一方、自然環境への影響や騒音問題など、課題も残されています。
馬毛島の基地建設は、日本の安全保障と地域経済の両面に大きな影響を与える重要なプロジェクトです。今後の動向に注目が集まっています。