2023年10月7日のイスラム組織ハマスの奇襲後、イスラエル軍はパレスチナ自治区ガザへの攻撃を始め、これまでに4万人以上が死亡した。イスラエルが占領するヨルダン川西岸でも、軍は「対テロ作戦」と称してパレスチナ武装勢力を攻撃し市民が巻き添えに。ユダヤ人入植者によるパレスチナ人への暴力も急増している。約2000年前に世界に離散したユダヤ人は欧州で長い間迫害され、ナチス・ドイツのホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)で約600万人が殺害された。差別に苦しんできたユダヤ人が建国したイスラエルがなぜ暴力をいとわない国家になったのか。イスラエルが建国された1948年の政府や軍の公文書を分析したイスラエル人歴史家で、英エクセター大のイラン・パペ教授に話を聞いた。(共同通信ロンドン支局 伊東星華)
【写真】「3万人の死者も仕方がない」ととらえる人も… 0歳から刷り込まれる「洗脳教育」、その考え方は… 埼玉に住むイスラエル人が同胞の思考回路を分析
▽パレスチナ人が排除される論理。シオニズム運動とはなんですか
―イスラエルは、ユダヤ人の国家建設を目指すシオニズム運動が主導して建国された。その思想的背景は。
「シオニズム運動は一種の植民地主義に基づいています。ただ大英帝国によるインド支配のような、先住民搾取が目的の植民地主義とは異なり、(米国のように)先住民をその土地から排除することが目的で、歴史家の間では「入植者植民地主義」と呼ばれています。
シオニズム運動の担い手は欧州の反ユダヤ主義の暴力から逃れたユダヤ人たちで、パレスチナという土地にユダヤ人国家をつくるためには先住民のパレスチナ人を排除する必要がありました。それには必然的に暴力が伴います。シオニズム運動の目的は可能な限り多くの土地を入手し、可能な限り多くのパレスチナ人を追い出すことでした。当然、パレスチナ人は抵抗します。その抵抗はシオニズム運動を展開するユダヤ人(シオニスト)にとっては、さらなる暴力行使の正当化の根拠になりました。建国運動の過程で村落を焼き払い、家屋を破壊し、住民追放や民間人虐殺もしました。まさに「民族浄化」です。それは今日にまで至っています。先住民のパレスチナ人が自らの土地を簡単に明け渡すはずはなく、パレスチナの土地にユダヤ人だけの民族国家を建設したいと考えても、不可能なのです」
▽ユダヤ教の役割とは