岩手のシンボル、雄大な岩手山。その美しい姿の裏に、2024年10月、噴火警戒レベル2への引き上げという現実があります。江戸時代には、積雪期特有の「融雪型火山泥流」とみられる災害も発生した歴史を持ちます。本記事では、岩手山の火山活動の特徴と、私たちが備えるべき防災対策について、専門家の知見を交えて解説します。
東西で異なる岩手山の火山活動
岩手山の雄大な姿
岩手山は、八幡平市、滝沢市、雫石町に跨る活火山です。1686年、1732年、そして1919年に噴火記録が残っています。2024年春頃から火山性地震の増加が観測され、10月には噴火警戒レベルが2(火口周辺規制)に引き上げられました。居住地域では通常通りの生活を送ることができますが、西側の想定火口から約2km圏内では大きな噴石への警戒が必要です。11月上旬以降、火山性地震の頻度は減少傾向にありますが、警戒は依然として必要です。
岩手大学地域防災研究センターの越谷信客員教授は、岩手山の火山活動を理解する上で、東西の構造の違いに着目する重要性を説きます。「東岩手火山」と「西岩手火山」に分けると、その特徴がより明確になります。東側は「片富士」と呼ばれる滑らかな裾野を持つ一方、西側はゴツゴツとした地形をしています。これは、過去の噴火活動の違いを反映しています。東側はマグマ噴火、西側は水蒸気噴火の痕跡と考えられています。
マグマ噴火は、地下のマグマが直接噴出する現象で、溶岩流などを発生させます。一方、水蒸気噴火は、マグマの熱で地下水が水蒸気となり、周囲の岩石と共に噴出する現象です。現在、特に警戒が必要とされているのは、西側で発生する可能性のある水蒸気噴火です。
過去の噴火履歴とハザードマップ
越谷教授によると、過去1万年における堆積物の分析から、西側では水蒸気噴火の堆積物しか確認されていません。一方、東側ではマグマ噴火の痕跡が多数見つかっています。この事実は、ハザードマップ作成の重要な根拠となっています。
融雪型火山泥流の模式図
さらに、江戸時代には「融雪型火山泥流」が発生したと推測されています。これは、噴火によって発生した熱で雪が融解し、土砂や火山灰と共に流れ下る現象です。冬期の積雪が多い岩手山では、特に注意が必要です。
火山防災研究機構の田中一郎氏(仮名)は、「火山活動は常に変化するものであり、過去の噴火履歴を参考にしながらも、最新の情報に注意を払うことが重要です」と指摘しています。気象庁の発表や自治体の防災情報を確認し、適切な行動をとるようにしましょう。
備えあれば憂いなし:日頃からの防災対策
火山噴火は予測が難しい自然災害です。日頃から備えをしておくことが、被害を最小限に抑える鍵となります。ハザードマップを確認し、避難経路や避難場所を把握しておきましょう。非常持ち出し袋の準備も忘れずに行いましょう。
また、噴火警戒レベルの変更や気象庁からの情報に注意を払い、適切な行動をとるように心がけましょう。家族や地域との連携も大切です。
岩手山は、美しい自然と恵みをもたらしてくれる一方で、火山活動という潜在的なリスクも抱えています。正しい知識を持ち、日頃から防災意識を高めることで、安全で安心な暮らしを守りましょう。