ラーメンは国民食と呼ばれながらも、実は食材の多くを輸入に頼っている現状をご存知でしょうか?この記事では、国産食材へのこだわりを持つラーメン店と、ラーメン業界が直面する価格設定の課題について探ります。
食料自給率の低いラーメン業界の現状
ラーメンの食料自給率はカロリーベースでわずか14%と言われています。麺に使われる小麦、醤油の原料である大豆、チャーシュー用豚肉の飼料など、多くの材料が輸入に依存しています。農林水産省の「やってみよう!自給率計算」ツールでチャーシュー麺の自給率を計算すると、結果は17%と低い数値が出てしまいます。小麦は18%、豚肉に至っては6%と、自給率の低さが課題となっています。ネギなどの野菜は比較的自給率が高いものの、全体的な自給率向上には国産食材の利用拡大が不可欠です。
ラーメンの具材のカロリーベース自給率
全国産ラーメンへのこだわりと利益の薄さ
東京都港区にある「麺ダイニングたかなわ」は、全ての食材を国産にこだわったラーメンを提供することで人気を集めています。北海道産小麦を使った麺、鹿児島産や群馬産の豚肉を使ったチャーシューなど、厳選された国産食材を使用しています。同店の川口勢津子さんは「安全・安心でおいしくて最高の物を食べてほしい」という思いから、国産食材への強いこだわりを持っています。
しかし、国産食材の調達コストは高く、ラーメン単体での利益はほとんどないのが現状です。サイドメニューを注文してもらうことで利益を確保しているという厳しい現実も明らかになっています。「極しょうゆラーメン」は1000円程度で提供されていますが、国産食材へのこだわりと価格設定のバランスが課題となっています。
国産食材を使いたい店主たちの想い
日本ラーメン協会の理事も務めるあるラーメン店主は、「国産を使いたい店は少なくない」と語っています。国産の新鮮な豚や鶏の骨を使うことでスープの味が格段に向上するなど、国産食材の品質の高さは多くの店主が認識しているところです。
しかし、国産食材の調達コストの高さが大きな壁となっています。日本ラーメン協会は、食材や人件費の高騰を考慮し、ラーメン1杯「1000円以上」を目標としていますが、総務省の統計によると、中華そば(外食)の全国平均価格は690円と大きな開きがあります。
ラーメンの未来:適正価格の実現に向けて
自給率向上や国産食材の利用拡大は重要な課題ですが、価格や安定供給の問題を解決しなければ難しい状況です。ラーメン業界全体で、国産食材のコストを反映した適正価格を実現することが、今後の課題と言えるでしょう。食品経済研究所の田中健太郎氏(仮名)は、「消費者の国産志向の高まりと生産者への適正な利益還元を両立させるためには、価格設定の工夫と、生産者と飲食店が協力したサプライチェーンの構築が不可欠です」と指摘しています。
国民食であるラーメンの未来のためには、生産者、ラーメン店、そして消費者が共に、国産食材の価値を理解し、持続可能なラーメン文化を築いていくことが重要です。