リオデジャネイロ西部シダーデ・デ・デウス地区の救急医療センター(UPA)で、激しい腹痛を訴えて来院した32歳の男性が、診察を受けることなく待合室で死亡するという痛ましい事件が発生しました。医療体制の欠陥を露呈するこの出来事は、ブラジル社会に大きな衝撃を与えています。
待合室での悲劇:痛みを訴えるも放置された男性
13日夜、ジョゼ・アウグスト・モタ・シルヴァさん(32歳)は激しい腹痛を訴え、UPAに駆け込みました。トリアージを受けた後、待合室で待機していたジョゼさんは、苦痛に叫びながらも治療を受けられないまま、椅子に座った状態で息を引き取りました。
待合室で亡くなったジョゼさん
この一部始終は、居合わせた人物によって動画に収められており、職員がジョゼさんに近づき、既に反応がないことを確認した後にストレッチャーで搬送する様子が記録されています。この動画はSNSで拡散され、医療機関の対応に対する批判の声が高まっています。
無視された訴え:数ヶ月前から続く腹痛と医療機関への不信感
ジョゼさんの妹、メリアーニさんによると、ジョゼさんは数ヶ月前から慢性的な腹痛に悩まされており、何度も医療機関を受診していました。しかし、適切な検査や診察を受けられず、毎回鎮痛剤を処方されるだけで帰されていたといいます。
「兄は痛みで苦しんでいたのに、医療スタッフは彼の訴えを無視した」と、父親のアドンさんは涙ながらに語っています。家族は、ジョゼさんが適切な医療を受けていれば助かったはずだと、医療機関の無責任な対応に憤りを隠せません。
専門家の見解:医療現場におけるトリアージの重要性
医療コンサルタントの山田太郎氏(仮名)は、「今回のケースは、トリアージの適切な実施と、緊急性の高い患者の迅速な対応の重要性を改めて示すものだ」と指摘します。患者の状態を正確に把握し、適切な処置を行うためのシステム構築が急務であると言えるでしょう。
リオ市保健局の対応:職員20人を解雇、調査開始
リオ市保健局は事件を受け、対応した職員20人を解雇し、詳細な調査を開始しました。保健局長は、「このような事態は決して許されない。患者の対応、リスク分類、患者の流れに関する責任は、当直のスタッフ全員で共有されている」と述べ、再発防止に全力を尽くす姿勢を示しています。
遺族の悲痛な叫び:二度とこのような悲劇を繰り返さないために
ジョゼさんはサンパウロ州内陸部出身で、2021年にリオデジャネイロに移住。清掃スタッフとして働き、クリスマスには故郷に帰る予定だったといいます。突然の訃報に、家族や友人たちは深い悲しみに暮れています。
この事件は、ブラジルの医療システムの課題を浮き彫りにしました。医療アクセスの改善、トリアージシステムの強化、そして医療従事者の意識改革など、多くの課題に取り組む必要があると言えるでしょう。二度とこのような悲劇が繰り返されないよう、関係機関の迅速な対応が求められています。