韓国統計庁が発表した「2017~2022年所得移動統計」は、韓国社会の所得格差の実態を浮き彫りにしました。なんと、国民の3割が6年間もの間、低所得層から抜け出せない現状が明らかになったのです。一方で、高所得層の6割は安定した地位を維持しており、所得格差の固定化が懸念されています。この記事では、この統計データを読み解きながら、韓国の所得格差問題について詳しく解説していきます。
統計データが示す韓国の所得格差の実態
2017年に低所得層(下位20%)に属していた人のうち、2022年まで低所得層にとどまった割合は31.3%。つまり、10人中3人は6年間もの間、貧困状態から抜け出せなかったということです。特に、将来への希望に満ち溢れているはずの若年層(15~39歳)でも、15.2%が6年間ずっと低所得層に留まっているという衝撃的な結果が出ています。
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一方、高所得層(上位20%)はずっと安泰です。6年間ずっと高所得層に留まった割合は63.1%。一度高所得層の仲間入りを果たせば、その地位を維持できる可能性が高いことを示しています。まるで「階層移動のはしご」が壊れてしまったかのようです。
所得格差の固定化:高所得層はより高く、低所得層はより低く
今回の統計調査では、所得格差の固定化も確認されました。2021年から2022年にかけて、高所得層の86%がその地位を維持した一方で、低所得層も69.1%が現状維持となっています。つまり、一度高所得層になれば簡単には転落せず、逆に低所得層からはなかなか抜け出せないという厳しい現実が突きつけられています。
中間層はどうでしょうか?下位20~40%に位置する層では、所得の変動が大きく、上位層あるいは下位層への移動が見られました。この層の人々は、経済状況の変化に最も敏感に反応するグループと言えるでしょう。
階層移動の停滞:韓国社会の閉塞感
所得階層の移動のしやすさを示す「所得移動性」は、2022年に34.9%でした。これは、2020年の35.8%、2021年の35.0%と比較すると減少傾向にあり、韓国社会の階層移動が難しくなっていることを示唆しています。
興味深いことに、女性は男性よりも、若年層は中高年層よりも所得移動性が高いという結果が出ています。女性の場合は、キャリアの中断や非正規雇用の多さなどが影響していると考えられます。一方、若年層は、将来の可能性を秘めているため、上位層への移動のチャンスが多いのでしょう。
韓国の所得移動性は、カナダの20~30%と比較すると高い水準にあります。しかし、所得格差の固定化傾向は深刻な問題であり、韓国社会の閉塞感を生み出す要因となっています。
所得格差是正に向けて
韓国統計庁の今回の調査結果は、韓国社会の抱える所得格差問題の深刻さを改めて示すものとなりました。所得格差の固定化は、社会の活力を奪い、格差の連鎖を生み出す可能性があります。韓国政府は、この問題に真剣に取り組み、格差是正に向けた効果的な政策を早急に実施する必要があります。例えば、低所得層への教育機会の提供や職業訓練の充実、雇用創出など、多角的なアプローチが必要となるでしょう。
専門家の声も紹介しておきましょう。韓国の経済研究所のキム・ヨンチョル氏(仮名)は、「所得格差の拡大は、社会不安を増大させ、経済成長の足かせとなる」と警鐘を鳴らしています。「格差是正のためには、教育投資の拡充や社会保障制度の強化など、長期的視点に立った政策が必要だ」と提言しています。
所得格差は、一朝一夕に解決できる問題ではありませんが、放置すれば社会の分断を招きかねません。韓国社会全体でこの問題を共有し、解決策を探っていくことが重要です。