韓国政府は、経済安全保障の強化に向け、特定国への依存度を2030年までに50%以下に引き下げるという野心的な目標を掲げました。世界的なサプライチェーンの混乱や地政学リスクの高まりを受け、経済の安定化を図るための戦略です。
経済安全保障品目の特定国依存度低減
韓国政府は、バッテリー素材や半導体など、戦略産業の素材・部品・装備において特定国への輸入依存度が高い現状を認識しています。例えば、バッテリー素材の天然黒鉛は97.9%を中国からの輸入に頼っています。 このような状況を打破するため、「2025-27サプライチェーン安定化基本計画」を発表し、2027年までに特定国依存度を60%、2030年までに50%以下に引き下げる目標を設定しました。
韓国の経済構造
55兆ウォン規模の投資と官民連携
この計画を実現するため、政府は2027年までに55兆ウォン(約6兆円)以上の金融・財政支援を投入する予定です。国内生産の拡大、備蓄の強化、そして官民一体となったサプライチェーン構築を目指します。例えば、尿素水に必要な尿素などは調達庁が購入し、需要企業が保管・使用するという官民連携のスキームも検討されています。
統合管理システムと早期警報システムの強化
経済安全保障品目の管理体制も強化されます。現在、各部処で別々に管理されている約300品目を統合管理し、全体部処合同で毎年点検・更新を行う予定です。また、需給不安定時に発令される早期警報システム(EWS)も、部処・機関間の情報連携を強化した統合モニタリングシステムへと進化させます。国家情報院の情報力も活用し、代替輸入先を迅速に確保できる体制を構築します。
サプライチェーンのイメージ
国内生産支援とサプライチェーン多角化
国内生産を促進するため、経済安全保障品目を国内で生産する企業には、投資から生産段階まで金融・財政支援を提供します。外国人投資補助金や地方投資補助金の拡充も検討されています。また、経済性が低く生産が難しい品目については、「サプライチェーン安定化支援プログラム」を通じて購買促進を支援する予定です。さらに、海運・航空などサプライチェーンインフラを活用した輸入先の多角化も支援します。
研究開発への投資と戦略技術の指定
核心技術の研究開発にも力を入れます。今後3年間で25兆ウォン以上を投資し、素材・部品・装備の代替(Replace)・低減(Reduce)・再資源化(Resource)の「3R」技術開発を支援します。サプライチェーン安定化関連技術を国家戦略技術に指定することも検討されています。
研究開発のイメージ
厳しい状況下での対応
崔相穆副首相兼企画財政部長官は、「厳しい国内状況において、政府の対応が十分でないという懸念があることを認識している」と述べ、この基本計画を通じてグローバルサプライチェーンリスクに対応する体制を完備する考えを示しました。 2024年は特に厳しい対内外環境が予想されますが、あらゆる手段を活用し、サプライチェーンリスクに備える姿勢を強調しています。