中国共産党内部における習近平国家主席と人民解放軍との間の緊張が高まっている。これまで、習主席側近の失脚や人事における軍主流派の巻き返しなど、水面下での権力争いが続いてきたが、12月に入り、両者の対立はより鮮明化している。本稿では、最近の出来事を紐解きながら、今後の中国政治の行方を探る。
軍機関紙「解放軍報」による批判と習主席の反撃
12月11日、軍機関紙「解放軍報」は「民主集中制」の重要性を強調する記事を掲載した。これは、集団指導体制を重視する姿勢を示唆するものであり、個人独裁体制を強める習近平主席への牽制と解釈できる。これに対し、習主席は12月16日、故・喬石氏生誕百周年記念座談会という場を利用し、「党中央の集中統一指導の堅持」を訴えることで、間接的に「解放軍報」への反撃を試みた。
習近平国家主席
本来、国家主席が出席する必要のない記念座談会で、あえてこの発言を行った背景には、軍部への影響力低下が見て取れる。直接的な反論や批判を封じる手段を失い、「外野」からの反撃を余儀なくされた習主席の苦境が浮き彫りになっている。著名な中国政治アナリスト、李明氏(仮名)は、「この行動は、習主席が軍部に対するコントロールを失いつつあることを示す象徴的な出来事だ」と指摘する。
恫喝めいた表現に隠された焦燥感
さらに同日、習主席の文章が党機関誌「求是」に掲載されることが予告された。その中で、習主席は党内の矛盾や問題を認めつつ、「刃を内部に向ける」という物言いを用いて、反対勢力への警告を発している。この強硬な表現は、軍部からの批判に追い詰められた習主席の焦燥感を反映していると言えるだろう。
11月に習主席が抜擢した苗華・中央軍事委員会政治工作部主任の失脚は、軍内部における習近平派の弱体化を決定づけた。その後も続く「解放軍報」の批判は、単なる政策への反発ではなく、習近平体制そのものへの挑戦へと発展している可能性がある。
中国政治の行方
一連の出来事は、中国共産党内部の権力闘争が新たな局面を迎えていることを示唆している。李明氏は、「軍部による習近平批判は、今後さらに激化していく可能性がある。党内における権力バランスの変化は、中国の国内政策だけでなく、外交政策にも大きな影響を与えるだろう」と分析する。今後の動向を注視していく必要がある。
中国政治の専門家、王芳氏(仮名)は、「習近平主席は、権力基盤の強化を図る一方で、党内外の反発を抑え込む必要に迫られている。今後の中国政治は、この綱引きの中で形成されていくことになるだろう」と述べている。