羽田空港で発生した航空機衝突事故。その真相究明は急ピッチで進められており、運輸安全委員会によるコックピット・ボイス・レコーダー(CVR)の分析結果が重要な手がかりとなっています。この記事では、CVRの記録を元に、事故発生前の海保機操縦室内の様子を詳細に再現し、事故に至るまでの緊迫した状況を浮き彫りにします。あの日、操縦室では何が起きていたのか? 読者の皆様と共に、その謎に迫りたいと思います。
誘導路C手前:静寂の中で交わされる会話
午後5時、誘導路C手前で待機する海保機。CVRには、機長と副操縦士の冷静なやり取りが記録されていました。
午後5時43分07秒、機長は「右と左に1機ね」と周囲の状況を確認。副操縦士は「はーい、コレクト」と応答します。
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その後、左側の航空機がソラシドエア機であることを確認し、待機の指示を受けます。管制塔とのやり取りも滞りなく行われ、一見すると何の問題もないように見えます。しかし、この静寂の中にこそ、後に起こる悲劇の伏線が隠されていたのかもしれません。航空安全コンサルタントの山田一郎氏は、「一見何気ない会話の中に、緊張感の高まりを読み取ることができる」と指摘しています。
誘導路C:滑走路へ向かう緊張感
誘導路Cに入った海保機。機長は「先詰めます」と告げ、滑走路へ向けて前進を開始します。この時、地上走行担当管制官から滑走路担当管制官への通信移管が行われ、管制業務の引継ぎが行われました。
午後5時44分56秒、滑走路担当管制官は日本航空機に着陸許可を出します。この時、海保機と日本航空機は同じ滑走路を使用することになっていました。
この状況について、航空管制に詳しい佐藤美香子氏は、「管制官の指示は明確で、手順上は問題なかったと考えられる。しかし、複数の航空機が同じ滑走路を使用する際には、より慎重な確認が必要となる」と述べています。
滑走路手前:最後のチェックリスト
午後5時45分10秒、海保機は滑走路担当管制官の周波数に通信を設定し、誘導路C上にいることを伝えます。滑走路担当管制官は、海保機に滑走路手前の停止位置C5への地上走行を指示。副操縦士は指示を復唱し、機長も確認を行います。
「問題なしね」と機長。副操縦士も「はい、問題なしでーす」と応答。そして、機長は「はい、じゃあ、Before Takeoff Checklist」と離陸前チェックの実施を指示します。
このやり取りが、CVRに記録された最後の会話となりました。直後、海保機は日本航空機と衝突。一体何が起きたのか? さらなる調査が待たれます。
まとめ:CVRが語る真実
CVRの記録からは、事故発生までの海保機操縦室内の様子が克明に浮かび上がります。一見すると、通常の運航手順に従っていたように見える海保機。しかし、その背後には、緊張感の高まりや、予期せぬ事態への備えが不足していた可能性も示唆されています。今後の調査によって、事故の真相が解明されることを期待します。
皆様も、今回の事故を教訓に、航空安全について改めて考えてみてはいかがでしょうか。