今年もサマージャンボ宝くじとサマージャンボミニが発売となった。販売期間のおよそ1か月、吉日や吉方位、ラッキーカラーなど、担げるだけの験を担いで購入する方もいらっしゃるだろう。そこで考えておくべきは“当せん後のこと”かもしれない。
【写真】3000万円当せん騒動の2日前、日本を震撼させた「深川通り魔事件」とは…緊迫する現場の様子
日本全国の宝くじにまつわる騒動に注目する「宝くじ異聞」。今回はとある市役所で同僚の男女が一等3000万円を当てたエピソードをお届けする。今でならネットで炎上するきらいもあるが、ことが起こったのは44年前の昭和56年。日本犯罪史に残る事件も発生した年だが、今と比較すると世間はまだおおらかだった。
(全2回の第1回:「週刊新潮」1981年7月9日号の記事を再編集しました。部署名、役職名などはすべて掲載当時のものです)
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仕事どころではなくなった2500人の職員
今回の「ドリームジャンボ宝くじ」(第169回全国自治宝くじ)の発売額は540億円、1億8000万枚。うち一等は180本だから、じつに100万枚に1本という気の遠くなるような当せん率になる。
その僥倖(ぎょうこう)に恵まれたのは、ある市役所に勤める男性のS主幹(51)と女性のN主事(50)。2人が共同で買った20枚のうちの1枚が、一等の当せん番号と一致していたわけだが、その照合を職場でやったものだから、市役所中がたちまち興奮に包まれ、2500人の職員は仕事どころではなくなった。同じ課のある女子職員によると、
「あの日(20日の土曜日)の朝8時半ごろだったと思います。Nさんが“おっかしくて、おっかしくて”といいながら、課のフロアに入って来たんです。もう笑いを抑え切れないという感じでした。NさんはそのままSさんのデスクの所に行き、何やら話をしていました。
Sさんの机の上に1枚の宝くじがドーンと置かれ、新聞で番号を調べているんです。そのうち、“当たってる、当たってる”という声がして、ワーッと人が寄って来ました。いくつもの新聞で調べて間違いないと分かると、歓声のような溜息のようなものが上がりました。ほとんどの人が2人に“よかった、よかった”と声をかけたんですが、“もうバカらしくて仕事なんかしてられねえよ”なんて露骨にいってる人もいましたよ」