兵庫県知事、斎藤元彦氏の公職選挙法違反疑惑をめぐり、事態は混迷を深めている。代理人弁護士による一度きりの記者会見以降、斎藤知事自身は「代理人に一任」を繰り返すのみで、疑惑の核心であるPR会社「merchu(メルチュ)」とその社長、折田楓氏の姿も見えないままだ。本稿では、この疑惑の真相に迫り、今後の展開を考察する。
疑惑の中心:PR会社「merchu」との不可解な関係
代理人弁護士である奥見司氏は、先月27日の会見でメルチュからの請求書を公開し、計71万5000円の業務内容は「政治活動及び立候補準備のための正当な支出」であると主張、疑惑を否定した。さらに、折田氏がSNSに投稿した「広報全般を任されていた」という記述についても「誇張」と断じた。しかし、同時に「見積書」の存在も明らかにしていながら、その内容は公開されていない。選挙活動中の動画制作に関する依頼や報酬の支払い契約があったのではないかという疑念は拭えない。ジャーナリストの横田一氏もこの点について疑問を呈している。
兵庫県知事の選挙違反疑惑に関する報道
異なる印影、手書きの不在:深まる疑惑の影
日刊ゲンダイが入手したメルチュの別件の見積書(広島市観光政策部との取引に関するもの)と、斎藤知事側への請求書の印影を比較すると、明らかな違いが認められる。広島市側の見積書には代表取締役印(丸印)が使用されている一方、斎藤知事側への請求書には会社印(角印)が押されている。企業の総務担当者によれば、請求書には通常、担当者が認め印代わりに角印を使用し、見積書には代表取締役の記名と丸印が求められるという。丸印は法務局に登録された会社の「実印」であり、偽造は犯罪となる。
請求書の印影比較
さらに、広島市側の書類には折田氏の手書きとみられる記名や金額の記載があるのに対し、斎藤知事側への請求書には一切手書きの文字がない。折田氏自身は現在も姿を隠しており、公開された請求書がメルチュ側で作成された確証はない。横田氏は、代理人弁護士が改めて会見を開き、メルチュの見積書も公開するべきだと主張する。
沈黙の知事、続く県政の混乱
日刊ゲンダイの取材に対し、奥見弁護士は「告発状が受理された以上、見積書は捜査機関に提出する必要があり、公開する意思はない。会見も現時点では開く予定はない」と回答。斎藤知事自身も説明責任を果たしておらず、兵庫県政の混乱は続きそうだ。神戸学院大学の上脇博之教授と元東京地検検事の郷原信郎弁護士による刑事告発の行方も注目される。
この疑惑はどこまで広がるのか、今後の捜査の進展に注目が集まる。