現代社会において、企業は従業員の評価や組織運営をどのように行うべきか?能力主義に疑問を呈する声が高まる中、本記事では、組織開発の専門家である勅使川原真衣氏の考察を基に、昭和世代と若者世代の価値観の違い、そして企業で導入されているエンゲージメントサーベイや1on1ミーティングの問題点について掘り下げていきます。
昭和世代と若者世代の価値観の相違点
「今の若い人はすぐに辞めてしまう」と嘆く昭和世代。しかし、育ってきた環境や時代背景が異なる以上、価値観の相違は当然のことです。昭和世代は、企業中心社会における能力主義の真っただ中で生きてきました。「できる人」が優遇され、「できない人」は冷遇される、この能力主義という配分原理に則って、企業は社員を評価し、処遇を決めてきました。
昭和世代と若者世代のイメージ
昭和世代は、企業が求める「能力」を身につけるために、際限のない努力を強いられてきました。しかし、その努力が報われ、存在を認められたのは、ほんの一握りの人々だけだったかもしれません。だからこそ、簡単に会社を辞めてしまう若者世代に理解を示せないのでしょう。
若者世代の「承認欲求」はどこへ向かう?
若者世代は、仕事以外の世界にも「承認」を得られる場を見出しています。趣味やコミュニティ、SNSなど、多様な場で自己表現し、繋がりを持つことで、自分らしさを肯定されているのです。仕事だけが人生の全てではない、という考え方が、昭和世代との大きな違いと言えるでしょう。
エンゲージメントサーベイと1on1の落とし穴
企業では、従業員の意識調査(エンゲージメントサーベイ)や1on1ミーティングが広く導入されています。しかし、これらのツールは、本当に組織改善に役立っているのでしょうか?
本音を引き出せないエンゲージメントサーベイ
若者世代は、必ずしも本音を明かさないことがあります。仕事は、本音を言い合わなくても、ある程度は回っていくからです。形式的なアンケートや面談で、建前を述べることも少なくありません。企業は、サーベイの結果を鵜呑みにするのではなく、従業員の真のニーズを汲み取る努力が必要です。
エンゲージメントサーベイのイメージ
表面的なコミュニケーションに陥る1on1
1on1ミーティングも、形骸化しているケースが見られます。上司と部下の関係性によっては、本音で話しづらい雰囲気になることもあります。企業は、1on1を単なる報告の場にするのではなく、相互理解を深めるためのコミュニケーションツールとして活用していくべきです。
時代の変化に対応した組織運営を
サイレント退職や静かな退職といった現象は、昭和世代には理解し難いかもしれません。しかし、これらの現象は、現代社会における労働環境や価値観の変化を反映していると言えるでしょう。企業は、過去の成功体験に固執するのではなく、時代の変化に柔軟に対応していく必要があります。
多様な価値観を受け入れる
昭和世代は、自身の経験に基づいて若者世代を指導しがちですが、まずは相手の価値観を理解しようとすることが重要です。「仕事でつらい思いをするのは当たり前」という考え方は、もはや通用しません。多様な価値観を受け入れ、個々の能力や特性を尊重する組織文化を醸成していくことが求められます。
本記事では、昭和世代と若者世代の価値観の違い、そして企業における意識調査や1on1ミーティングの問題点について解説しました。企業は、これらの課題を認識し、時代に合った組織運営を目指していくことが重要です。