韓国政局は混迷を深めている。27日、国会は尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の職務停止に伴い、大統領権限を代行していた韓悳洙(ハン・ドクス)首相の弾劾訴追案を可決した。わずか14日前に尹大統領が弾劾訴追されたばかりであり、権限代行の首相までもが弾劾されるという異例の事態となった。 尹大統領による「非常戒厳」宣言から3日、国政運営の先行きはさらに不透明さを増している。
首相弾劾の背景
今回の首相弾劾は、最大野党「共に民主党」などが主導した。発端は、憲法裁判所の裁判官3名の欠員に対する任命問題だ。野党側は速やかな任命を求めていたが、韓首相が26日に任命保留を表明したことが、弾劾訴追の引き金となった。韓首相は職務停止となり、崔相穆(チェ・サンモク)経済副首相兼企画財政相が権限代行を引き継いでいる。
韓国国会で韓悳洙首相の弾劾訴追案可決に抗議する与党議員
尹大統領の弾劾審判開始
一方、憲法裁判所は27日、尹大統領の弾劾審判を開始した。弁論準備手続きが行われ、尹氏側は罷免に値する重大な憲法違反ではないと主張し、争う姿勢を示した。尹大統領自身は出廷しなかった。 憲法裁判所は今後、尹大統領と韓首相の両方の弾劾案について判断を下すことになる。 政治評論家の木村智氏(仮名)は、「今回の首相弾劾は、大統領弾劾審判への圧力とも捉えられる。憲法裁判所の判断が今後の韓国政局を大きく左右するだろう」と分析している。
韓国憲法裁判所で尹錫悦大統領の弾劾審判の弁論準備手続き
今後の政局展望
韓首相は声明で、「憲法裁判所の迅速で賢明な決定を待つ」と述べている。また、崔権限代行は「国政の混乱を克服するために全力を尽くす」と強調した。 しかし、大統領と首相の両方が弾劾訴追されるという前代未聞の事態に、国民の不安は高まっている。 今後の政局は予断を許さない状況であり、憲法裁判所の判断が注目される。韓国政治専門誌「コリア・ポリティクス・レビュー」によると、過去の弾劾事例を鑑みると、数ヶ月から半年程度で結論が出る可能性が高いとされている。