韓国政局:首相弾劾で泥沼化、大統領罷免の思惑も

韓国の政局が、革新系最大野党「共に民主党」による韓悳洙首相の弾劾訴追で、かつてない泥沼化を見せています。大統領罷免を狙う野党と、これに強く反発する与党の対立は激化し、国政の麻痺が懸念されています。

野党の思惑:大統領罷免と早期選挙

共に民主党による韓首相の弾劾訴追は、尹錫悦大統領の罷免と早期の次期大統領選実施を狙った戦略的な一手と見られています。李在明代表は、弾劾訴追案の採決前に「尹錫悦を罷免し、擁護する勢力を根絶する」と強い決意を示しました。

憲法裁判所の欠員と罷免の可能性

野党が弾劾訴追に踏み切った背景には、憲法裁判所の欠員裁判官の任命問題があります。現行の判事6人態勢では大統領罷免には全員の一致が必要ですが、2人が来年4月に退任予定。欠員補充がなければ審理がストップする可能性があり、野党は早期の任命で罷免の可能性を高めようとしています。

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国政安定協議体の頓挫と大統領代行への圧力

弾劾訴追後、与野党は国政安定協議体の開催で一時合意しましたが、野党が韓首相の弾劾訴追案を提出したため頓挫しました。韓首相の職務停止を受け、崔相穆経済副首相兼企画財政相が大統領代行を務めていますが、野党は裁判官任命を求め、崔氏への圧力も強める構えです。

前例のない事態と深刻な影響

大統領代行が弾劾訴追される事態は前例がなく、権力不在の影響は深刻です。日米首脳との電話会談などで国政の正常運営をアピールしていた韓首相の職務停止は、代行体制の対外信頼度低下につながる可能性も懸念されます。

ウォン安と出口の見えない対立

政局の混乱への懸念から、韓国ウォンは対ドルで急落し、リーマン・ショック以来のウォン安水準となりました。国民の力の権性東院内代表は野党を強く批判しており、与野党の対立は出口が見えない状況です。韓国政治専門家の朴智星氏は、「このような政局の混乱は、国民生活や経済に深刻な悪影響を及ぼす可能性がある。与野党は冷静な対話を通じて、国政の安定化に努めるべきだ」と警鐘を鳴らしています。

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韓国経済への影響

政局の不安定性は、韓国経済にも暗い影を落としています。ウォン安の進行は輸入物価の上昇を招き、インフレ圧力を高める可能性があります。また、外国投資家の投資意欲を減退させ、経済成長の鈍化につながることも懸念されています。