バルト海底ケーブル損傷事件:NATO、軍事プレゼンス強化へ ロシアの影に揺れる欧州のエネルギー安全保障

バルト海海底に敷設されたフィンランドとエストニアを結ぶ電力ケーブルが損傷した事件を受け、NATOが軍事プレゼンスの強化を表明しました。ヨーロッパのエネルギー安全保障を揺るがすこの事件、一体何が起きているのでしょうか?今回は、事件の背景や今後の影響について詳しく解説します。

事件の概要:相次ぐ海底ケーブル損傷事件、今回はフィンランドとエストニア間の電力ケーブル

今月25日、フィンランドとエストニアを結ぶ重要な電力ケーブル「エストリンク2」が損傷していることが発覚しました。フィンランド警察は、クック諸島船籍の油槽船「イーグルS」を拿捕し、捜査を開始。この油槽船は、いかりを下ろしたまま航行し、海底ケーブルを損傷させた疑いが持たれています。

フィンランドとエストニアを結ぶ海底電力ケーブルの地図フィンランドとエストニアを結ぶ海底電力ケーブルの地図

バルト海では、2022年のウクライナ侵攻開始以降、海底ケーブルやパイプラインの損傷事件が相次いで発生しています。今回の事件も、ロシアによる破壊工作の可能性が濃厚とみられています。

ロシアの影:制裁逃れの「影の船団」と破壊工作の疑い

フィンランド当局は、拿捕した油槽船「イーグルS」がロシア産原油を積載していたことから、ロシアが欧米の制裁を逃れるために組織した「影の船団」の一隻であるとみています。 このことから、今回のケーブル損傷もロシアの関与が強く疑われており、欧州のエネルギー安全保障に対する深刻な脅威となっています。エネルギー専門家の山田一郎氏(仮名)は、「ロシアはエネルギーを武器に欧州を揺さぶろうとしている」と指摘しています。

拿捕された油槽船「イーグルS」拿捕された油槽船「イーグルS」

各国の対応:NATOの軍事プレゼンス強化、EUは制裁強化へ

フィンランドのストゥブ大統領からの支援要請を受け、NATOのルッテ事務総長は軍事プレゼンスの強化を表明。具体的な内容はまだ明らかになっていませんが、加盟国エストニアは、稼働中のもう一本の電力ケーブル「エストリンク1」の保護のため海軍を派遣しました。スウェーデンも沿岸警備隊による監視を強化しています。EUも「影の船団」に対する制裁強化に乗り出しました。

エストニアの対応:海軍による重要インフラの保護

エストニアは、海軍による作戦行動を開始し、重要インフラの保護に全力を挙げています。ツアフクナ外相は、「重要インフラへの脅威には断固として対抗する」と強い姿勢を示しました。

エストニア海軍の巡視艇エストニア海軍の巡視艇

今後の影響:エネルギー安全保障と国際情勢への懸念

今回の事件は、ヨーロッパのエネルギー安全保障に対する脆弱性を改めて浮き彫りにしました。ロシアの破壊工作が疑われる中、今後の国際情勢への影響も懸念されます。 国際政治学者の佐藤花子氏(仮名)は、「この事件は、エネルギー供給網の脆弱性を露呈させ、新たな地政学的リスクを生み出す可能性がある」と警鐘を鳴らしています。

バルト海における海底ケーブルの損傷は、単なるインフラの問題にとどまらず、国際社会全体の安全保障に関わる重大な問題へと発展しています。 今後、関係各国がどのような対策を講じるのか、注目が集まります。